酒徒行状記

民俗学と酒など

午後の行商人

「面倒を背負い込みたくなかったら午後の行商人からは何も買うな」チアパス州を旅行中の筆者にメキシコのある教師が忠告した。「売れ残りを押しつけられるだけならまだいい。ときとしてとんでもないものまで抱え込まされることになる」
船戸与一『午後の行商人』冒頭

 ここんとこ船戸与一にはまっている。以前、『猛き箱船』を読んでちょっとハマったが先日『砂のクロニクル』を読み、全作品を読もうと決意した。
 今日読み終えたのはメキシコのサパティスタ運動をテーマにした『午後の行商人』。
 メキシコの大学院で経済学を学ぶ日本人香月祐一がタランチュラと名乗る行商人の復讐に巻き込まれるという話だが、実にぐいぐいと読ませる話で半日で読み終えてしまった。さすが豊浦志郎名義『叛アメリカ史』船戸与一名義『国家と犯罪』(「幾度もサパタ」というタイトルはここから)と2本のルポタージュを書いてから小説にしただけあって、現地の匂いがいつもより濃厚に匂っていた。

前に読んだ『海燕ホテル・ブルー』はあまりそれがなかった。日本の伊東が舞台だからしょうないのだけど。
その前の『流砂の搭』(中国の民族運動)『虹の谷の五月』(戦時中の日本人とフィリピン人の混血「ジャンピーノ」の物語)『蟹食い猿フーガ』(湾岸戦争を時代背景にした、コン・ゲーム小説)は良かった

それにしても、作中でよく出てくるメスカル酒ってどんな酒だ?ちょっと呑んでみたくなった