酒徒行状記

民俗学と酒など

英雄(HERO)

かねてより見たかったチャン・イーモウの『英雄』を観た。
秦の始皇帝をかつて狙った、三人の暗殺者を始末したと、「無名」と名乗る小役人が名乗り出る。
しかし、無名の語る暗殺者の様子と、秦の始皇帝の見た暗殺者達の様子はあまりにかけ離れていた。小役人の真の目的は何か。剣と芸術・天下統一と愛情というのが主題であるが、映画の骨子はストーリーよりもワイヤーアクションとCGと派手な色使いであると思われる。要は現代版京劇というにふさわしい。

 そういった観点で見ると、私が一番気に入ったのは一番初めの槍の名手長空と無名の殺陣であった。二人の技といいバックに流れる琴の音色といい、一番動きが京劇っぽくて(長空の槍は中国武術の槍なので、ちゃんと撓るのだ)好きである。
 後半の物理法則完全無視のワイヤーアクションよりも、カンフー映画レベルの体術に要所要所でCGを混ぜるほうがどうも「真実」のようで面白いと思うのだが・・・(始皇帝の言う「観念」の闘いをやっているときは物理法則無視でもいいけどさ。残剣対無名の湖上の戦闘シーンなんかは良かった。それにしてもなんだか日本のような湖の秋景色であった)

 ちなみに、色使いのほうは、できれば戦う相手同士は色を分けてほしい気がする。(というか京劇の基本だと思うのだが)侍女と女剣士飛雪の公孫樹林での戦いのシーンなどは一瞬、どっちがどっちだかわからなくなりかけました。

 ただ、全体として先週の『火山高』よりも圧倒的にこちらの方が面白かったです。