酒徒行状記

民俗学と酒など

麻布十番祭り

 昼に永福町で古武道の稽古をした後、先生のお宅で、宅配の中華と暑気払いのビールを軽く頂いていると、友人から「麻布十番祭りに行かないか」とメールが入った。
 麻布十番ならば、温泉もあるので稽古のあとの汗も流せるし、筋肉痛の予防にも良かろうと思っていったのが、誤りだった。
 麻布十番は近くに各国の大使館が集まっていることもあり、ここの祭りは各国の屋台の出る祭りとして近年知られている。たしかデイリーポータルZでも何年か前に特集が組まれたはずだ。そのぐらいの予備知識はあったのだが、まさかあんなに混んでいるとは思わなかった。先日行った東京湾大華火には当然劣るものの、まさかこんなところがこんなに混んでいるとは思っていなかった。
  友人と検討した結果、多分、大江戸線が出来たのと、六本木ヒルズの所為だろうと思われた。

 屋台の並ぶメインの通りを見ると、なるほど、土地柄を反映してかフローズンマルガリータだとかサングリアなどバーっぽい呑みものを出す店が多い。
 人混みのせいで屋台にも近づきにくいが、なんとかサングリアの赤と白を貰うことが出来た。赤はぬるかったせいもありいまひとつだったが、白はパイナップルベースでわりと呑みやすかった。でも一杯500円は高い、お祭り料金だ。


 ひとしきり人並みにもまれ、それでもなんとかつまみに豆源のおかきと、店名は忘れたが中華料理屋の油淋鶏を食べて、赤羽橋駅から今度は月島へ向かった。

 月島には有名な岸田屋というモツ煮の店があるが、今回は止めて、友人の提案に従いもんじゃを食うことになった。私は西日本の出なので、お好み焼きは好きだが、もんじゃはあえて食いたいという食べ物ではなかった。しかし同行の友人は好もんじゃ好きで、「もんじゃのおいしさを教育してつかわす」との話であった


 友人の指示のまま、店に入りもんじゃを2枚(この数え方でいいのか?)頼み、サワーを飲む。
 ふむふむ、サワーは焼酎が濃くて旨い。古武道の先生の家でビールばかり呑んでいたので、ちょうど口が変わって旨かった。友人は手馴れた体でもんじゃを焼いている。
 もんじゃとサワーが合うことはラズウェル細木『酒の細道』などでも提唱されているが、なるほど合うものだ。グレープフルーツサワー・レモンサワー・レモンサワー・緑茶サワーと呑み進めていく。2枚は食えないと思ったが、すっかり平らげて、満腹になった腹を抱えて店を出た。


 店から駅までは、紫の緞帳のような空に、月島の高層ビルの灯がともり、夏の終わりの夕暮れとなっていた。
 何人か麻布十番から流れてきたと思しいカップルが浴衣姿で夕涼みをしている。
 そういえば、月齢のせいか、月島で月を見ることが出来なかったが、それでも私は満ち足りていた。