酒徒行状記

民俗学と酒など

怪味茄子定食

 小岩まではバスで40分くらいだった。
 小岩駅に着くと丁度小岩神社の秋の祭礼で、町中にちょうちんがぶら下げられ、まつりの太鼓がなりひびいていた。
 途中、「どですか書店」という古本屋で東直己の「義八郎商店」を発見。購入する。
 店の入り口で、神輿が通り過ぎるのを見ていた、店のおばさん(南條竹則氏の小説で「はっちゃん」とよばれるおばさんである。いまでも正しい名前は聞けていない)と鉢合わせ。 「ひさしぶりじゃない。今日はお出かけ?」
 「昨日、葛西のSさんの家に泊ったんで、折角なので来ましたよ」
 などと挨拶をして、青島ビールと怪味茄子の定食を頼む。
 
 暑さのせいで、水のようにビールが喉を通る。初めて缶入りの青島を飲んだ
 以前から「怪味」とはなにか気になっていたが、ゴマダレにピリ辛醤油を和えて味付けをしたものであるらしい。なるほど怪味だ。
 ゴマダレの甘さと醤油の辛さが相俟って実に旨い。ご飯によく合う味である。

 相変わらず量の多い定食だが、怪味茄子・キムチ・ご飯・中華スープと言う組み合わせなので野菜っ気が多くてありがたい。
 昨晩「半七」で500円600円で、ままごとのような量のつまみを食ったが、あれは愚行だった。この店に来れば僅か定食500円で食いすぎなほどの美味を食えるのである。ウマイウマイ。


 ぶっ倒れそうなくらい食べて腹を抱えながら店を出る。途中同じ商店街の喫茶店モルダウ」で少し休んでやっと落ち着いたが、それまでは、腹が苦しくて辛いくらいだった。
 「苦しい、死ぬー。でもシアワセーじゃあ。満腹満腹」などと思いながら総武線に乗って帰路に着いた。