神田の出雲そば本店で友人と出雲そばを食べた。
この店ははじめてだったが、出雲そば自体は昔、父方の郷里の鳥取に帰ったとき、倉吉で食べたことがあった。
母が三朝の温泉病院に入院していたのを見舞った帰りだったように思う。湯治気分の入院のできる、よさそうな温泉病院であった。
ただ、そのときの出雲そばは、店が悪かったのか、そう旨かった記憶もなかった。(倉吉はまだ鳥取だしね。)
まずはビールでノドを湿す。
お通しは海苔のようなものが出てきた。変わった名前だったが、今思い出せない。
焼鳥・なめこ豆腐・のやきかまぼこを頼む。
「のやきかぼこ」とメニューではなっていたが、よく鳥取や島根では
「のやき」と呼ばれたり、「のやきちくわ」と呼ばれることが多い。のやきは野焼きの意であり、今回頼んだのも、蒲鉾のように蒸すだけでなく、周りに火で焦げ目がつけてあり、また、竹輪状に中央部に穴が空いていた。
今回の原料は、「あご」(トビウオの方言)であったが、私は豆腐竹輪が一番好きである。ちなみに島根では一般的に「のやき」とのみ呼ばれるが、鳥取では「あごちくわ」「とうふちくわ」「鯛ちくわ」と現材料名を冠して呼ばれることが多い。
友人にあごの意味や、とうふちくわの旨さを話しているうちに、ビールから日本酒に切り替えた。
日本酒も島根の銘柄がそろっている。
八千矛650円(一合)
天界700円(一合)
李白750円(一合)
天界と李白は呑んだことがあったので、八千矛から行く。少し甘くも感じられるような、旨みがある。でもけっして、べったりと舌に残るという感じではなく、咽喉越しもよく、ついもう一杯呑みたくなる味だ。
李白は八千矛よりは辛口になっている。天界はなんだか新潟辺りの酒を飲んでいるような辛口さだが、どうも旨みに欠ける気がする。
一番、八千矛が旨かった。東京であまり見かけないのは残念だ。
聞けば八千矛は出雲大社のお神酒にもなっているとのこと。縁起もいい名だし、いっぺんで好きなってしまった。
ひとしきり腹もくちくなったので、〆の蕎麦を頼む。
三段の割り子に入れられ、いくつかの薬味がついてくる。
ふつうのざる蕎麦と違い、そばつゆをそばにかけて食べるのである。
色は皮も混ざっているのか、色黒な感じである。コシがあって旨い。
薬味は鶉卵をかけて食べると、コシと合ってなかなかの味だった。
出雲の国には、まだ幼い頃松江に行ったことがあるきりで、あまり記憶もない。
一度、松江・宍道湖・出雲大社・一畑薬師を巡ってみたいものである。無論そのときは、この出雲蕎麦をつまみに、八千矛を鱈腹呑むのである。嗚呼、旅がしたいものぢゃ。