酒徒行状記

民俗学と酒など

帰ってきた男

 私は彼を10年待っていた。そして彼は帰ってきた。

 原りょう{外字・寮-ウ冠} 『愚か者死すべし』
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152086068/ref=pd_sr_ec_ir_aps/249-9745191-9117968
 銃声が2発。1発は容疑者に、もう1発は彼を庇おうとした刑事に当たった。事務所を閉める大晦日に、沢崎が巻きこまれた新宿署地下駐車場での狙撃事件は思いがけぬ方向へー

 非常に寡作な作家、原りょうの新作がついにでた。前作、高校野球八百長疑惑と能楽家の後継ぎ問題を絡めた『さらば長き眠り』から10年。長かった。
 まだ途中までしか読んでませんが、以前の作品と少し文体が違っています。会話文で「俺」とか喋るシーンもあるし(沢崎はいつでも「私」だと思い込んでいた)。でも「図に乗るなよ、探偵」という名セリフも、また「○○○、探偵」というそれの新バージョンもあったりします。ネタバレになるのでまだ伏せときますが。
 とりあえず、八重洲ブックセンター行って、サイン会とトークショーの整理券はゲットしてきました。
 新刊の予定と原りょう会いたさに、原りょうの住んでる鳥栖に行こうかと(<コルトレーン>というジャズバーで時々演奏されるそうなので)悩んでいた10年間も終わり、生の原りょうが拝めるとは。嬉しくて泪が出てきます。
 「新宿駅の構内やホームには見苦しい制服から解放された子供達の姿が目立ったが、冬休みもすぐに終わりだった。楽しい時間は長くは続かないということを知るのが人生の第一歩だが、苦しい時間も同じだということは人生の終わりが近づいても知るのが難しかった」(18章より)