酒徒行状記

民俗学と酒など

ナイーヴなあなた

 白泉社のベストリミックス(最近コンビニで売っている、カバー無しの単行本と雑誌の間のような装丁のリメイク版マンガ単行本のことね)で二宮ひかるの「ナイーヴ」がついに発売された。

 2chなんかでは、「なかなか手に入らない」「売れ行きがいいんじゃなくて、あんまり刷られてないようだ」「新規読者開拓の前に信者が全部買ってしまいそうなヨカーン」といった意見が出ているが、都内在住の強みで、なんとか発売日の翌日2月11日には、近所のローソンで手に入れることが出来た。
 さて、発売前は「単行本で全3冊のはずなのに全398pとはどういったことか?」「上下巻で+単行本未収録の作品となるのでは」と物議をかもしたが、実際には2巻途中の切りの良いエピソードまでで、後は粗筋でまとめてある。
残念なことに書下ろしや単行本未収録の作品は出てはいないが、表紙も良い感じに色っぽいし(黒背景。麻衣子、スカートをたくし上げようとするの図)、「恋愛欲を刺激する」という連載当時のアオリも表紙に使われているし、信者としては当然ながら、立ち読みで済ますなどというはしたないことはせずに、購入した。
 あらためて読み返してみると、やっぱりオモシロイ。

 そもそも私と二宮ひかるの馴れ初めは『いつわりの恋』の連載の頃であったように思う。(但しバックナンバーを漁っていたら、伊藤明弘の『LOWMAN』が二宮ひかるの『Lesson』(『誘惑』所収)と同じヤングアニマルの巻号に出ていた。「LOWMAN」は連載中に読んだような記憶があるので、この時はまだ読んだものの意識はしていなかったのかも知れぬ)。
 はじめは、「ちょっとHだけれども、えらく細かい機微の作品をかくひとだなあ」と思い、なんとなく注目はしていたが、『二人で朝まで』『ソノ時、彼女は…』『ひまわり』とその後の連載を読み進むにつれてすっかり一个の二宮信者になっていた。
 そして、もっとも転機とも言うべきハマり方をしたのが、前述の「ナイーヴ」であった。ナイーヴは二宮ひかる初の長編であるが、リアルタイムで読みながら、主人公田崎と一緒に感情移入しながらつくづく「女はナゾだ」と思いながら読んだのであった。


 ちょうどその頃はヤングアニマル本誌も、二宮ひかる以外に、『砂の薔薇−デーザートローズ−』(新谷かおる)・『総理大臣織田信長』(志野靖史)・『相撲遊戯』(木村浩二)『侠客』(たがみよしひさ)『たびてつ』(山口よしのぶ)『戦うアナウンサー』(みずしな考之)など、気鋭あるいはマニアックな漫画家が多くて、本誌も面白かったというのもあり、隔週で発売される発売日が楽しみであった*1

 
 今読み返してみると、「オンナはナゾだ」と思っていた部分、なんとなく微妙に理解したような気になるところもあったり、ヒロイン麻衣子の心情が汲みとれるところもあって興味深いものである。
 例えば2話の「私……よく知らないひとと、ゴハン食べるの苦手なんです」「てめえはっっ!!メシも食えんような相手とセックスできるって言うんかい!!」のシーンなんかも、連載中読んだ時は田崎の意見ももっともだと思ったが、今は麻衣子の羞恥や遠慮の感覚もなんとはなしに、「(麻衣子ほど極端なのはともかく)ヒトとメシ食うのが苦手な女の子っているよなあ」と思うような気もするのである。また短いシーンではあるが、田崎と不和になった後、職場で二人きりになり、互いに仲直りしようとして結局行き違うシーンの人物の描き方・二人の会話なんかは、初め読んだときは今ひとつ解らなかったが、読み返してみると、謝ろうとしてすれちがう二人というのがよく表現されてるなあと思っている。


なにはともあれ、これを機にこの普及版が売れて、下巻&未収録短編が出るか、新作が出て欲しいものである。

*1:今はヤングアニマル本誌は『セスタス』『ホーリーランド』等は読んではいるが、なんだか全体的に今ひとつな感じが…あのころからあったので今でも続いているものというと、『ベルセルク』か、『ももいろシスターズ』(現在は『ももいろスゥィーティー』)のももせたまみぐらいかしらん