酒徒行状記

民俗学と酒など

二つのエッセイの終わり

 この2月で普段よく読んでいる、ネットでの連載コラム2本が最終回を迎えた。

 一つは寿郎社のサイト(http://homepage2.nifty.com/jyurousya/)で連載していた東直己の『東直己の固ゆで日記』である。
 東直己のエッセイはやはり寿郎社刊の『ススキノハードボイルドナイト』で読んでいたが、酔っ払い生態図鑑的な「ススキノ〜」よりも「固ゆで日記」の方が社会問題・政治問題を扱う事の方が多かった気がする。
 作者の東直己は『探偵はバーにいる』(早川書房刊)などの<俺>シリーズなどで作品の主人公と作家自身が似通っていると言われているが、<俺>シリーズの俺の飄々とした酔っ払いぶりと、エッセイでの作者自身の政治問題社会問題を論ずる筆調があまりに違うのに初めは驚いたものであった。


 もう一本は文芸春秋社の雑誌『本の話』(http://www.bunshun.co.jp/mag/hanashi/)に連載された南條竹則の『湯けむり読書日記』である。こちらはweb版は11月号までしか掲載されていないが、原本の最新号2月号をあたると、最終回の旨が書いてあった。
 こちらのコラムは、作者のお得意の文人風な漫文である。
 内容は月に一度は温泉に行っては執筆し、倦んだら読書をし、腹がすいては酒を呑み、中華を食らうという作者の生活を描いたものであるが、やはりその読書の内容、レベルは私が如何に本を読んでいないか悟らしめるものであった。(ついでに言うと、如何に行っていない温泉・食っていない中華があるかということも悟らしめてくれるものでもある。)
私も作者の影響で、田山花袋の『日本温泉めぐり』(角川春樹事務所刊)や幸田露伴なんかは読んだが、未だに式亭三馬の『浮世風呂』やら李伯元の『官場現形記』なんかは読みたいと思いつつ読むに至っていない。


 私もお気に入りの温泉に籠もって、湯と読書に耽りたいものだと常々思う。一ヶ月・一週間は無理でも、せめて3・4日はできるかしらんとも思うのであるが、なかなかに六かしいことではある。