酒徒行状記

民俗学と酒など

荒川ウサギ見物

 東京、堀切は荒川の土手に野良ウサギが繁殖したため、堤防に巣穴を掘ってしまって問題になっているという。(デイリーポータルZ「ウサギをめぐる休日」http://portal.nifty.com/special05/02/25/
 この野良ウサギ、野良とはいっても、もともとは土手に住むホームレスの人が7匹ばかりを飼っていたら、40匹くらいに増えたものだという。河川管理局では窮余の策として、囲いを作り、オスメスを仕分けしたものの、柵が低く、有効な解決策はとれていないことである。

 日曜にこのウサギを見に行った。昔、パンダウサギを飼っていたので、ひどく気になったのだった。
 私がウサギを飼い始めたのは、たしか中学3年生のころだった。誕生日のお祝いに両親が突然買ってきたのだった。
 はじめは、「ウサギなんか欲しくなかったのに」と駄々をこねていたが、ぴょこぴょこと飛び回る姿を見てすっかりペット馬鹿になってしまった。
 やがて一代目のうさぎは3年くらいで亡くなってしまい、しばらくしてから2代目を少しの間飼ったが家の事情で飼えなくなってしまった。その後3代目を飼ったが、悲しい事に一昨年前死なせてしまった。
 また飼いたいとは思うものの、また失ってしまうこと思うと、怖くて飼えなくているのだが、ペットショップやら雑誌やらでウサギの写真なんかを見たりすると、飼おうかしらんと悩んでいるのである。
 そんな折、上記の野良ウサギ荒川で繁殖のニュースを聞き、矢も盾もたまらなくなり見に行ったのだ。


 地下鉄で浅草迄行き、東武線に乗り換える。
 高架なのと、古くある線のせいか出発の時、ぎしぎしと車体がきしんで、なんだかジェットコースターの出発を思わせてなんだかわくわくしてくる。普段乗った事ない列車なので、車窓に目をやると曳舟という駅が目に入った。。曳舟北原白秋の『東京景物詩』に詠われた地で、私は一度、ここを訪れてみたかったのだ。
  

  あかしやの金と赤とがちるぞえな。
  かはたれの秋の光にちるぞえな。
  
  片恋の薄着のねるのわがうれひ
  曳船の水のほとりをゆくころを。
  
  やはらかな君が吐息のちるぞえな。
  あかしやの金と赤とがちるぞえな。

 
 残念なことに、窓に映る景色は白秋の情緒ある詩とは違って、変哲もない住宅街であった。駅からはやたら白木屋の看板が目に付いた。


 しばらくすると堀切駅に着く。小ぢんまりとした駅を降りると、土手と水門が見える。いかにも川沿いである。
 ここで一つ問題が発生した。デイリーポータルZの記事では、駅の傍だとあったが、それらしい人影がなかったのだ。
 土曜日の晩にTBSの全国放送のニュースで取り上げられたので、ウサギ見物の人も多いだろうから、それについていけば良かんべと思っていたが、そう降りる人もいなかった。
 うさぎはドコだ、いったい!!
 
 後から記事を読み返してみると、「土手を右に曲がり、駅から3分くらい歩いたところ」とあったのだが、このとき私はすっかりそれを見落としていて、誤って左(千住方面)へ曲がってしまったのだ。
 日曜のこととて、行けども行けども、河原のグラウンドでサッカーor野球をやってるのしか見えてこない。ホームレスの青いビニールシートかと思って近づくと、ただの駐車場の管理事務所だったりする。「これは、もしや対岸なのか」と思って2キロほど上流の新千住大橋をわたる。
 アシの原を抜けていく。貴重な自然として保存されているのだ。ウサギはアシ原には住まないよなあと思いつつ、あたりに目を凝らす。ジョウビタキかと思しき鳥が居たような気がしたが、違っていた。マムシ注意の看板もある。ウサギがねらわれないかしらん。

 ワンドを抜けて―ワンドってのは、大きな水溜りのことで、河川の水量によって川の一部になったり、水溜りになるところらしい―四つ木橋のほうへ向かう。四つ木橋を越えたあたりで、ホームレスの集落がある。あれかしらんと思って行くと、幾人かのホームレスが逆さにしたバケツを叩いて高歌放吟し踊りをしている。鼓腹撃攘の世とはこのことだね。

 2時間ほど歩いたから〆て8kmほど歩いたのだろうか。うんざりするほど野球少年とサッカー小僧を見、元の堀切駅すぐそばに目指す野良ウサギのコロニーを見つけたのであった。

 場所は千住曙橋の堀切駅よりのたもと、ニュースになったウサギを仕分ける柵は、飼っているホームレスの方の小屋組みを中心として囲うような形で作ってある。
真ん中に仕切りをこさえて、オスメス分けるようにしてあったが。やはり60cmという塀の高さではまったく効果を発していないようである。

 何故60cmなんてサイズにしたかというと、「法律で60cmより大きいと構造物になってしまい許可が必要になるから」だと、なんだか支援団体のような人が話していた*1

 デイリーポータルZの記事では、ウサギが自由気ままに飛び跳ね回る土手を想像していたのだが、実際来て見ると、見物の客が多くて、むしろウサギの方から怯えて、柵に逃げ込んでじっとしている感じであった。行った時間が昼だったのでウサギも眠かったってのもあるだろう。
 また、ほとんどのウサギはホームレスの方の小屋の下に巣を作って姿を見せておらず、ときどき見物客が持ってきたエサを食べに来るのが数匹いるだけである。私もウサギにあげようと小松菜と人参を持ってきたのだが、他の見物客の持ってきたエサが、貢物宜しく既に山積みされていて、ウサギ殿はチラッと目をやったきりそっぽをむいてしまった。あと。もうすでに里親募集はやっていないとのことであった。
 

 デジカメで写真をとった後、電車に乗ってきた北千住へ。残念なことに日曜で<大はし>は開いていなかった。宿場町商店街をふらついたあとちょっと商店街から離れた<花笠>という飲み屋で生レモンサワーを飲む。旨かったが、隣の人が呑んでいるレモンチューハイの方がなんとなく旨そうに見えた。サワー2杯と手羽先唐揚げ・つくね串を食う。鶏のたたきが店長お勧めで書いてあったが、今日はやっていないとのこと。時期が悪かったのかしらん?


 荒川をさまよったり、ホームレスの踊りを見たりといろいろあっが、なんにせよウサギは可愛いものだ。飼うべきか飼わざるべきかやはり悩むものである。きっと春のウサギの繁殖期になったらまた見に行くだろう。
 

*1:根拠は河川法24条?少しググってみたが、60cm以上だと構造物になってしまうという根拠はわからなかった。運用でそうしているだけか?仮に許可が必要でも、今回柵を作ったのは荒川下流河川事務所だから許可をとればウサギだけを囲った構造物は作れそうな気もする。(もっとも、今回の野良ウサギは個人の所有物なので、所有権者の許可がないとウサギのみを囲うことはできないだろうし、ウサギの所有権者自体が不法に河川を占用している状態なので、そのことはどうなるかって問題は残るが)ちなみに、ホームレスの方がウサギの所有権者になるのかどうかってのもちょっと疑問に思ったが、http://www.ara.or.jp/arage/news/050222.htmlなどで河川事務所が「飼い主の方」と書いているので、ホームレスの方が所有権者なのは間違いないようだ。ただ、ちょっと調べてみたら、三味線用の野良猫の捕獲と動物愛護について、こんな論争があるようだ。http://www.livex.co.jp/okonomi/9706/top.html
まだ一読しただけだが、深い問題のようだ。とりあえずメモをしておく