以前、魁独身流という流派の事を書いた。(「魁独身流」id:syuto-yoshikaze:20040713)この流派の詳細がわかったので記す。
この流派は明治23年に井ノ口松之助という人物が著した『武道図解秘訣』という書物に書かれている流派であった。
この本の中では魁独身流は「魁独身棒」と書かれ、著者井ノ口松之助*1が、高木英雄*2・吉田千春*3・田子信重*4らに習い、また榊原健吉*5からの聞き書き等をもとに、色々な棒術の技を折衷して編み出した棒術らしい。
この『武道図解秘訣』によると
○魁独身棒
此は以前、高木英雄君に教授を受け、吉田千春先生に学び入り、田子信重先生にも学び、榊原大先生の聞き書き等を、今、我、是れを折衷して其の方を考え、常に敵に向かふが如くして、稽古するに極く為になる所を取て左に図解す。人、是を知る時は其の身の保護になることに、是を学ばんとする者は先ず此の書を得と暗誦すべし・・・中略・・・生捕者(イケドリモノ)盗人(ドロボウ)等を捕ふる為めには必用の業(ワザ)なり。誰にても覚え置きて有益なりとす。後略・・・
とあり、井ノ口が独習での棒術稽古のために考案した流派であることがわかる。流派名も、「魁」はたぶん美称か、あるいは新しく考案したというほどの意味で、「独身」は独り稽古の意であるようだ。
形は5本あり、それぞれ、胴払(ドウバライ)・突払(ツキハライ)・高突水月(タカツキスイゲツ)・流棒向払(ナガレボウムカフバラヒ)・替返シ(カツギガヘシ)とのことである。
なお、『武道図解秘訣』は1991年にBABジャパン社から『兵法要務 柔術剣棒図解秘訣 武道図解秘訣』として井ノ口松之助の2冊の本を合本する形で復刻され、小佐野淳が解説を寄せている(たぶん以前書いた記事の『図説武術事典』の挿絵も同じ底本からとったのだろう)。また、興味のある方はオンライン出版でも手に入るようなので(武道通信http://www.budotusin.com/onlinebook.html)読んでみると良いかも知れない。