酒徒行状記

民俗学と酒など

「そうですか 今ポロロッカ星は14年に一度の春なんですね!野原一面に来世草や生肉花が咲き乱れ」


 海つながりというわけではないが、夜、『NHKスペシャル 煙と金と沈む島』・『NHKアーカイブス「大海嘯」』を見る
 Nスペは温暖化問題について、海面上昇で国土を喪失していく南国ツバル・二酸化炭素の排出権をビジネスにするアメリカ・石炭採掘による二酸化炭素排出国中国を三点同時観察をした作品。
 なんとなく海面上昇で島がなくなると聞くと、じわじわ陸地がなくなるイメージがあるが、さにあらず、島中から吹き出た水で一気に洪水が起こるさまは、見ていて恐ろしく感じた。
 また、排出権という温暖化対策の切り札とも云うべき対策が、株や証券ビジネスと同じような世界的なビジネスに転化していき、それが環境に影響をあたえていくという構図がよくわかり、経済と環境は決して一国だけでなく世界的に連鎖していることをあらためて認識させる番組であった。


 大海嘯は揚子江の大潮の逆流を描いたもの。
 20年前のドキュメンタリーで、揚子江河口部、銭塘江の風景・生活・毎年1回秋の大潮の日に逆流してくる「銭塘江の潮信」を描いている。
 背景音楽をあまり使わず、テロップなどもほとんど使わないドキュメンタリーのスタイルが印象的であった。

 銭塘江の潮は、水滸伝の花和尚魯智深の死のところで出てくるので、名前だけは知っていた。
 梁山泊の豪傑魯智深はかねてより人生の予言として、師匠から偈を授けられていた。
 すなわち、「夏に逢って擒り、臘に遇って執る。潮を聴いて円し、信を見て寂す」
 この偈の「潮を聴いて円し、信を見て寂す」というのが銭塘江の潮信であり、これを見ることで魯智信は時分の死期の近いことを知るのである。

 で、今回ドキュメンタリーを見たが、実際にあんなに大きいものだとは思わなかった。
 「潮を聴いて円し、信を見て寂す」なんて暢気なものではなく、ほとんど大潮というより津波である。
 天下三大奇観というだけはあって、たくさんの見物客が出ていたが、そのうちの2名が波にさらわれるほどのものであり、NHKのスタッフも命綱をつけての撮影であったという。


 同じような現象はアマゾン川にも見られ、これは「ポロロッカ」と呼ばれる。
 これも是非映像で見てみたいが、こっちのポロロッカのほうは、久米田康治のギャグ漫画『さよなら絶望先生』を思い出してしまって、つい、にやっと笑ってしまう。
 『さよなら〜』とポロロッカの関係は、単行本1巻あたりを読んで下されば分かるかと。
 シニカルな笑いとこの章のタイトルにした電波な台詞が楽しめます。


 なお、本日のタイトルは夢枕獏の『月に呼ばれて海より如来る』より
まだ読んだことはないのだが、モチーフは既読の『上弦の月を食べる獅子』(夢枕獏)と共通するという。
 「獅子」では海から陸に上がる生き物がSFとして幻想的に描かれているが、「海より」も同じようなものであろうとおもわる
 本日は海関係の話題であり、「ほや」もなんとなく夢枕の小説に出てきそうなので付けてみた。
 蛇足ながら、夢枕の上記の小説について面白い批判をするサイトを見つけたので紹介しておく。
 http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/2607/SPR/SprYume.htm夢枕獏の螺旋』
 うーむ、私も文章を書く時は気をつけねばね。やっぱり何事も、観念ではなく現物を見てから物を書かなくては。