酒徒行状記

民俗学と酒など

2007年02月02日に見た夢『志怪小説』

昔の人のblogを漁っていたら、ふっと、自分もその昔mixiにこんな夢の記録を書いたのを思い出した。
いまだに不思議な夢だったので懐かしくここに記す

―――以下転載

 中国、宋代、ある町の役所に呼包義という男がいた。
 呼は役所の下っ端の文官であったが、棒術が好きで、棒術の稽古をするのを唯一の趣味としていた。ところがある日、民間に武術が広まると反乱の元になるとして、武官を除いて、文官や庶民は武術の稽古をしてはならないという御触れが出された。
 呼はしかたなく人目につかないように、ひとり隠れて家の庭で稽古を続けていたが、呼の家の裏に住む占い師の密告により、稽古中の現場を取締りの役人に押さえられてしまった。しかも逮捕されるときに、どうしたはずみか呼は死んでしまった。
 それよりこの町の役所には呼の幽霊が出るようになった。夜中、死んだはずの呼が棒を持って役所をうろうろ歩くというのである。 役所の者はその噂におびえたが、豪胆な武官何人かが役所にとまりこみ、呼の幽霊を退治することとなった。
 夜中、呼の幽霊が出たとの知らせを聞いた武官達は、呼の幽霊を取りかこんだ。一人の武官が呼を後ろから羽交い絞めにし、もうひとりが警棒でもって呼の胸へ突きをくれると、あっさりと呼の姿は掻き消え、後には棒術に使う棒が床に残っていた。武官達は不思議がってその棒を見ていたが、そうしているとどこからともなく4つ5つの唐子髷の子どもたちの行列が現れ、残った棒を担いで「呼包義」「呼包義」と唱えながらどこかへ消えていった。
 
 またこの事件の後、呼を密告した占い師が池に落ちて水死するという事件があった。
 この事件の起きた日は河鼈を祭る日で、水に入ると河鼈に引きずり込まれて死んでしまうという日とされていた。
 占い師が池に飛び込むところを目撃した女の言によると、女が占い師に「今日は池には近づかない方がよいですよ」と声をかけると、占い師は「わかっておる」とこたえた。しかし、占い師はそのまま何かに魅入られたかのように池の縁にすたすたと近づき、そのまま立ち止まることなく飛び込んでしまったとのことであった。
 後にこの占い師が呼を密告したことがわかり、呼が河鼈に頼んで復讐をしたのだと町では噂された。

−−−

という夢を見た。
なんだか中国の志怪小説(『剪燈新話』『聊斎志異』みたいなやつね)の1編みたいな夢だった。

 志怪小説みたいな夢を見たのは、南條竹則が古典の志怪小説から題をとった小説『鬼仙』を先日、読んだからだと思う。
 呼包義の名称も水滸伝の主人公宋江のあだ名「呼保義」から来たものだろうし、棒術が出てくるのは、寝る前に友人からもらった棒術の稽古書を読んだからだと思うのだけど、呼の幽霊が残した棒を子どもたちが担いで消えていくというあたりは、なんでそんな夢をみたのかさっぱりわからん。

 中国だったら棒じゃなくて棍だろうといったつっこみどこはあるものの夢にしてはやたら結構の整った話だったので、なんとなくここに載せておく。
 ちなみに河鼈(ごうべつ?)というのは夢の中では日本でいう河童みたいなものをイメージしていたのですが、実際には中国には河童の伝承はないようです。

―――転載終わり。
未だになぜ自分がかような夢を見たかはわからない。