酒徒行状記

民俗学と酒など

オイシノコ

 同じく、おばあさんから、逸見家でかつて正月に行われていた正月行事の話を聞く。

 逸見家では大晦日の晩に、「オイシノコ」と呼ばれる団子を当主と甲源一刀流の門弟とでつくる。
 このオイシノコは、1年の日数を象って365個が摩利支天の厨子に供えられ、またシチヨウ(「七曜」だと思われる)といって7個が、道場の鬼瓦に供えられる。
 摩利支天に供える時には、風呂で体を清めた当主がこれを行い、シチヨウは門弟によって供えられる。この作業には女性は参加してはならなかった。 
 オイシノコは米粉で作った白い団子で、マユダマと同じようなものであるとのこと。(写真を見るとサイズはピンポン玉よりすこし小さいくらいだと思われる。)
  
 この行事は、逸見家のみで行われる行事とされ、戦前まで毎年行われていたが、戦時中、食料不足のため廃絶した。
 戦後一度だけ、これを再現し、そのときの写真を資料館に飾っているとのことである。

 なんとも貴重な話を聞くことが出来、ありがたいことであった。