2023年11月の半ばからはじめた一日一論文。基本平日のみではあるが、1か月続けてやることができた。
2023年12月前半のまとめ。ひと月分でまとめてようと思ったが、一つの記事があまりに長くなりすぎるので、半月ごとにする。また今回からタグをつけた。
ここら辺はいろいろ試行錯誤。
なおアイキャッチ写真は立川の焼肉屋。慶州苑。今回紹介した論文の<たまラーメン館>の写真が出てこなかったので、かわりに、私が立川で贔屓にしている焼き肉屋を載せる。ここは肉もだけど、タレがものすごい旨いのでおすすめ。
【滋賀関連】
小川都弘 農村工業の展開過程における職人集団の変容と技術拡散-高島扇骨業の場合
博論の滋賀の研究の一環として読む。扇の骨の調査どう進めるか…
#一日一論文 小川都弘 農村工業の展開過程における職人集団の変容と技術拡散-高島扇骨業の場合https://t.co/1eW8QAudE2
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月1日
滋賀県高島市西万木の扇骨産業について聞き取り調査を行い、扇骨技術の拡散を媒介する空間としての集落内部におけるソーシャルネットワークの特質について,扇骨職人集団の変容と関連づけて検討したもの
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月1日
高島扇骨を産業化させた井保氏(寿太郎?万吉?かどちらを指すかは不明)の業績に注目し、また高島銀行の影響にも言及している
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月1日
海外市場への販路の再拡張をはかるために,京都 ・大阪の問屋資本との結合をはかり,地元労働力の獲得よりも熟練な都市職人を受け入れることに熱心」だったという言説は今の高島の扇骨の正史ではあまり語られない点(『井保寿太郎翁・顕彰誌』の影響をうけているとおもわれる)ではないかと思う。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月1日
高島の扇骨の調査、一度した後できてないのでまた行かねば。日本産の扇子の骨のほとんどは滋賀県高島市産なのですhttps://t.co/UxXb0dswxZ
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月1日
こちらのほうがわかりやすいかもhttps://t.co/lCE5PYhUVe
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月1日
谷口 賛 大井隆弘 『伊賀・甲賀における草葺民家の金属板の被覆状況に関する調査報告』
やはり滋賀ネタとして読む。建築ネタも好き。
以前 カエルくん(けろりん)@kaerukun_ctu さんから、屋根の破風に「水」の字を書く意味を聞かれた関係で読む。
水の字は全国的にみられる火伏の呪いなんだけど、それとは別で、滋賀の湖北から三重辺りに見られる破風の下の五角形の出っ張りについては分布が知りたい。
【参考】カエルくん(けろりん)@kaerukun_ctu さんとのやりとり
田舎で散見される屋根が特徴的な家屋の上部に「水」と描かれてるんだけどどんな意味があるんでしょうかね pic.twitter.com/VkGv1fHW0C
— キムラタカシ (@jinya_kim) 2023年11月14日
@syutoyoshikaze さん、お尋ねします。こっちだと米原から大垣あたりで良く見られる、民家の破風の水の字=懸魚の火伏せのまじないって、いろんなブログでは見かけるんですけど合ってます?
— カエルくん(けろりん) (@kaerukun_ctu) 2023年11月15日
火防であってますよ。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月15日
ただ、ご指摘の通り水の字は全国的です。地域によっては龍の模様を書いたりもします。
むしろ妻側の五角形の出っ張りのほうが地域性あるかと。あれは伊勢から滋賀、関ヶ原あたりでよく見る意匠だと聞いてます。(屋根神云々は実はわたしは知らなかったのですが。)
■以下本論文の概要と評
#一日一論文 谷口 賛 大井隆弘 『伊賀・甲賀における草葺民家の金属板の被覆状況に関する調査報告』https://t.co/fjAhWO2a8w
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月6日
伊賀・甲賀市の草葺民家の草葺の劣化を抑えるための金属板の被覆についての調査。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月6日
古民家の研究では、草葺屋根に金属板で被覆してしまうと、せっかくの草葺が外から見えなくなってしまうものとして研究の対象とされてこなかった。
一方、建築学の方では、この論文のように金属板の被覆と地域差まで検討するほど研究が進んでいることに驚く。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月6日
研究手法もGooleストリートビューで悉皆調査をしてあたりをつけて、被覆の多い集落の現地調査をするというもの。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月6日
先日棟飾りについて聞かれて、滋賀の湖北で見られる五角形の棟飾りの分布について気になっている。
古民家の不動産販売のサイトから事例を収集するというのを考えたが、Gooleストリートビューで検索し確認するのはより精度が高まると思われる。先行研究なかったら、少しやってみるか。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月6日
なお、茅葺の金属被覆については面白いサイトを見つける
金属被覆に否定的な評価ではなく、「缶詰」としてプラスの評価をするもの。
この視点は面白いので取り入れたいhttps://t.co/xfTQTqYo63
【生活改善運動】
岩本通弥 日本の生活改善運動と民俗学
博論のために読む、岩本通弥氏の生活改善運動関連の論文はすべて目を通さねばならぬ。
#一日一論文 岩本通弥 日本の生活改善運動と民俗学https://t.co/B9jdJJ6TWZ
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
1920~30年代の「生活改善運動」について、日本だけでなく東アジアを視野に入れ、生活改善運動と民俗がパラレルに勃興したことに着目する。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
本論文は韓国の『実践民俗学研究』32号に掲載されたハングル論文の日本語版。日本の戦前期の生活改善運動について、あまり知らない韓国人研究者に向けて、
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
・生活改善同盟会と迷惑という公共意識
・生活改善運動と民力涵養運動
について他の論文とも重複させつつ、わかりやすく整理している。
その上で、同時代の東アジアの生活改善運動として
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
中国:1934年 蒋介石の新生活運動が
韓国:1929年からの朝鮮日報社の生活改新運動、1931年から開始され
る東亜日報社のヴ・ナロード運動があることを示す
そして
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
①モダンな大都市の誕生によって、目まぐるしい速度で変転する〈日常〉が生まれたことが、
民俗学や生活改善運動を生み育てる土壌になった。
②初期の民俗学者が対応した、いわゆる民俗は、「生活」そのものであって、保護・保存する
ものではなく、改善・変革していくべき対象であった。
③電車や映画館、講演会や展覧会など、新たなる公共空間の領域が伸張することによって、そのパブリック・スペースにおける振る舞いや所作のモデルが求められたが、民俗学も生活改善運動も、その根本に据えたのは、公民意識の醸成だった。両者とも自覚的で自省的な姿勢を最重視した。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
④生活改善(運動)とは、時代の変化や社会の進歩に伴って生じる、それまでの生活との部分的不適合を解消するために、自己遂行的になされる自己改革のための諸事業だと定義できる。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
⑤目まぐるしく変転する〈日常〉に対して、民俗学は永遠なる日常として、いわゆる民俗とい
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
う形象も提示したが、過剰なる社会変革に対しては、改良主義的に、変化プロセスという理法を示すことで対応した。
と整理し「民俗学が現代の〈日常〉や現在に至ったプロセスを、問わねばならないのは、当代の民俗学者は、それぞれの生きる時代を、それぞれに説明する責任があるからだ」とする
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
本論文と岩本の「可視化される習俗̶民力涵養運動期における『国民儀礼』の創出」「『生活』から『民俗』へ̶日本における民衆運動と民俗学」「家族をめぐる二つの生活改善運動」は要確認。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
ハリー・ハルトゥーニアンの議論は未読のため、いまいち生活改善運動との接続が不明であった
柳田國男 「神道私見」「例えば神様に生米・生魚・生大根…を供えているのは明らかに明治の初めから始まった作法」であるにも拘らず」という文言は神饌の話をするときには重要なので確認する。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月4日
岩本通弥[問題提起]生活・日常・世相―変化を捉えるために
同じく博論のために。ヴァナキュラーについても改めて確認、島村恭則氏の『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ? 』も読まねば。
#一日一論文 岩本通弥[問題提起]生活・日常・世相―変化を捉えるためにhttps://t.co/hIdUq54Xrm
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
昨日の岩本通弥「日本の生活改善運動と民俗学」の発表が行われたシンポジウム「日中韓の国際シンポジウム「何気ない日常/変わりゆく日常―なぜ考え、いかに把捉し、どう記録するのか」」の基調論文
シンポにあたってハルトゥーニアンの「戦間期、世界の多くで日常性、Everydaynessが問われた」という意見を取り上げる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
1920年代~1940年代に、西欧や日本で、社会編成を攪乱し変革をもたらす日常性という問い(概念や思想)が同時多発的に続出したとし、柳田の民俗学もその一つであるとする
生活改善運動については
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
1.比較史的観点から見た生活改善運動
1920~30年代に日中韓でほぼ同時発生的に胚胎し、戦後それぞれに展開していった生活改善運動/新生活運動を、東アジアの比較研究から、その同時代性と異質性を視野に入れつつ、戦後の日常史的な生活変化をふまえて相対化する
2. 多領域における生活改善運動への着目
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
民俗学だけでなく、多領域の生活改善運動研究成果をふまえた研究を行う。特にLifeやLebenといった西欧
語の翻訳語として近代日本語に登場した、「生活」という言葉の本質を含意する
3.「生活」への焦点化と「普通の人びと」の日常的変革
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
生活改善には「普通の人びと」の能動的で、ヴァナキュラーな実践があった
4. なぜ、日常習慣の改善だったのか?
挙止動作をはじめ、日常習慣の改善という皮相・些末とも思われる運動たか検討する
との4点の切り口でシンポを行うことを示す。
そして
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
2.「日常」―概念/それぞれの受容と展開
ドイツ民俗学の「日常」定義を引きそれぞれの国の民俗学では「日常に対する」受け止め方の相違と相互のすり合わせを行う
3.「世相」―方法/変化する日常どう把捉・記録するか
方法として変化する日常を、どう把捉し、いかに記録するかを検討する。
最後「おわりに」では
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
ハルトゥーニアンが強調した「日常性」Everydaynessをもとに、文化をヴァナキュラーに再配置していく生活実践が必要であることをのべる。
かなり概念的な基調論文なので、要約はむつかしい
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月5日
ハルトゥーニアン歴史の不穏―近代、文化的実践、日常生活という問題』蒋介石の新生活運動、朝鮮、韓国のセマウル運動、生活改新運動といったキーワードやサルリムサリ研究は押さえておこう
アクチュアライズ、日常性といった用語も確認が必要である
【歯科】
小野崎,純" レイモンド・チャンドラーにおける歯科的記述についての一考察 : 1900年代の米国歯科事情
歯の俗信なんかもやってるし、ハードボイルド小説はとても好み。この論文あまりアクセス数伸びなかったけど、結構面白い論文だと思う。
#一日一論文 "小野崎,純" レイモンド・チャンドラーにおける歯科的記述についての一考察 : 1900年代の米国歯科事情https://t.co/PzIKIcnBeS
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月7日
ハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの作品に出て来る歯科に関する記述を整理し分析したもの。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月7日
『高い窓』のニセ金貨づくりに、当時の最新の金インレー鋳造法が使用されていることや、1900年代、近代的な歯科技術が発展し、米国において歯科衛生に対する意識が変わっていたことが、作品に反映されているとする。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月7日
不思議とハードボイルド小説って「歯」に関するシーンやせりふが多い。谷口ジローの『事件屋稼業』では主人公の大家はたしか歯科医師で、痛い治療をするシーンが多く出て来る。また東直己でも歯並びの悪さから、相手の社会階層(教育のなさ)を批判するシーンがあった。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月7日
本論文にあるようにチャンドラーの作品も歯科に関する記載は多いが、歯科衛生における意識の変化があるとする指摘は大変面白い。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月7日
講演の抄録もあり
25) レイモンドチャンドラーにおける歯科に関連した記述について(日本歯科医史学会第34回(平成18年度)学術大会講演事後抄録)https://t.co/ITu87vWpXb
【地理学】
平澤 健太郎 ・牛垣 雄矢 立川駅周辺におけるラーメン店の集積の特徴とその背景
先日立川に行ったのでついでによむ。
たま館も一度行ってみよう。
#一日一論文
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月8日
平澤 健太郎 ・牛垣 雄矢 立川駅周辺におけるラーメン店の集積の特徴とその背景https://t.co/jcT5UzFPM5
立川駅周辺のラーメン屋、ならびにラーメンストリート・ラーメン館たまを取り上げ、ラーメン店
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月8日
集積地立川としての地域的特徴特徴と背景を検討するもの
・特徴として初期に開業した店舗は地元など地縁に基づき,後期に開業した店舗は交通の要衝など地理的条件を考えて出店するケースが見られた
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月8日
・集積地となる背景にはラーメン店集積施設が 2 つ存在することで口コミが増加したこと
・激戦区という表現は雑誌などのマスメディアや、企業の Web サイトよりも,個人が発信源となる UGC(User Generated Contents)によってつけられ、そのラベリング効果による認知効果も上げる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月8日
集積地の定義に食べログなどサイトのの記録を使った手法が面白い。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月8日
ただUGCについては頷けるのだけど、そもそも食べログの口コミはテキストマイニングなどを使って分析しても良かったかも
参考文献の牛垣雄矢(2022):『まちの地理学―まちの見方・考え方』古今書院は気になる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月8日
あと、立川が地産品の「うど」ラーメンを考案したが定着しなかったとのこと
一応今でも出す店はあるようだ
五十番https://t.co/mlgyL7XC29
立川何度もいっていたがラーメンたま館はまだ入ったことがなかった。(ラーメンストリートはあり)またラーメンストリートと一緒に定期的に店舗を入れ替えているのは知らなかった
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月8日
【仏教史】
佐々木, 閑〈評論〉ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争 1 (序言)
Twitterで話題なっていた馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争 と新書を読む。
ただ、結果的には良い新書を知ることができてすごく良かった。
また佐々木, 閑の論争の内容の解説が非常にわかりやすく、門外漢にも参考になった。
なお、時事物はアクセスが多く普段が一日一論文のツイートの表示回数は100~1000くらいなのに、3500件となった。
#一日一論文 佐々木, 閑〈評論〉ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争 1 (序言)https://t.co/FzbmsQksDz
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月11日
TLで話題になっていたので読む
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月11日
仏教学者の馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争を論評したもの。特に清水氏の『上座部仏教における聖典論の研究』刊行について、日本印度学仏教学会にて、ハラスメント・出版妨害があったことを記すとともに両者の論争を整理する
馬場氏は2008年に『上座部仏教の思想形成 ―ブッダからブッダゴーサへー』を著し、聖典註釈者ブッダゴーサが単なる註釈者なのではなく,一個の思想家でもあったとした。一方、清水氏は『聖典論の研究』で馬場説に対して、ブッダゴーサは独自の思想家ではなく,1人の註釈家であったという説を唱える。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月11日
これについて馬場氏より反駁が出され、同じくパーリ語研究者の林隆嗣氏からも清水氏への批判が提出されたというのが大まかな論争の流れとのこと。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月11日
門外漢なので、清水説・馬場説どちらが正しいかはわからぬし、また、本論評も「序言」で詳細はこれから記載されるとのこと
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月11日
こういう風に論争についてわかりやすい説明があると勉強になる。
ハラスメントについては第三者なので判断は控えるが、昔からお寺さんや神社さんは、比較的体育会系というか上位下達な要素が強いと聞いている。そこらへんがこじれてというのも、あるかもと思った(師資相承の世界だしねえ)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月11日
いちおうtwitterでのまとめhttps://t.co/RMvPHP3EEm
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月11日
今、清水氏の『ブッダという男』も読み始めたが、こちらも非常に面白い。これについてもいずれ紹介したい。
清水俊史 『ブッダという男-初期仏典を読みとく』
#一日一論文 清水俊史 『ブッダという男-初期仏典を読みとく』https://t.co/UAiywycgRo
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月12日
馬場氏との論争(+アカハラ?)で話題になったので読む。
私自身は仏教史・仏教哲学は、子どものころ手塚治虫の『ブッダ』を読んだきりでほとんど知らないが、とても平易に最先端の研究を読めた。
近現代の<ブッダ>研究が、歴史的事実に基づいた研究を志向しているにもかかわらず、研究者の希む神話を纏わされて、平和主義者になったり、男女平等主義の先駆者にさせられたりしていることを問い直すという筆者の企図はとても分かりやすく、腑に落ちるものであった。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月12日
非常に充実した参考文献が評とともにページを割かれているのも、今後、勉強をしたい初学者のブックガイドとして大変良いと思う。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月12日
自分ももし将来、新書や入門書をかくのであれば、こうした丁寧なブックガイドをきちんとつけたいと思う。
「第3章ブッダは平和主義者だったのか」の項については、先日読んだ正木晃の『増補 性と呪殺の密教: 怪僧ドルジェタクの闇と光』の議論とも比較できる。チベット密教のドルジェタクは呪殺を「度脱(対象を解脱させる行為)」として正当化していたhttps://t.co/c3UKPI6uE7
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月12日
初期仏典ではそうした要素はないか、薄いようである(初期仏典では僧への危害など一部を除いて、暴力は修復できる罪という扱い)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月12日
沙門宗教などとの差異も、ジャイナ教や六師外道について知らなかったので、興味深かった。ジャイナ教の方では仏教の方をどのように見ているのであろうか?
また第二部7章 ブッダという男をどう見るかでイエス研究についても触れているのも面白い。どの研究者も自分が研究対象にする人物に対しては大抵、何かしらの念を抱くものであるが、やはり宗教者が対象だと、愛着敬愛の念が強まり、理想的な人間としてつい描いてしまうのかもしれない
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月12日
いずれにせよ、久しぶりに面白い新書にあたった。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月12日
佐々木閑 〈評論〉ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争 2
#一日一論文 佐々木閑 〈評論〉ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争 2 先日の清水俊史氏と馬場紀寿氏の論争に関する評論の続編https://t.co/jXRwTpLGUz
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
(1)序言の方はアカハラ問題に関する盤外戦の記述が多かったが、こちらはいよいよ論争の中身。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
序言に関する #一日一論文 はこちらを参照https://t.co/CmWeUIIpEu
両氏の論争がパーリ仏教研究の小さい事柄ではなく、仏教史上重要な意味を持つことを示す。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
仏教はおおまかにパーリ語の三蔵を聖典とする上座部大寺派(南方仏教)と、北方部派仏教(北方仏教の一つ。現在は廃滅。パーリ語の三蔵を聖典とする)と大乗仏教(北方仏教の一つ。)の3派に分けられる。
佐々木氏の解説では、今回の論争は上座部大寺派がどのような思想をもち、歴史的変遷をたどったかに関する論争であるとのこと。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
大まかには馬場氏はブッダゴーサという重要な学僧が上座部大寺派の聖典を整理し、思想の方向性を定めたとするのに対し、清水氏は馬場氏の論証には漏れがあり、ブッタゴーサ以前から聖典の整理はなされており、彼が思想の方向性を定めたとは言い難いとして論争である旨解説がなされている。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
複雑な論争について、基礎知識も含めて、わかりやすく解説されていて、素人が仏教史を理解するうえでもよい評論であった。(ただ、私だったら、表や図を使って説明するだろうに思うところもあった。ここら辺は学問作法の違いかしらん。三派の分布図なんかはほしいところ)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
また清水氏と馬場氏の論争も、盤外戦のひどい味噌がつかなければ、本来は健全な良い論争になったであろうに、その点は惜しいことである。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
論争に関する第三者の評論というのは民俗学でもあまりないのだけど、こういうわかりやすい解説をしてくれる論文は非常にありがたい。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
あまり上手い喩えではないが、関節技の応酬をきちんと説明してくれる人と格闘技の試合見物に行った感じである。
ところで、本論文末尾に「清水氏は実業家としても活躍中と仄聞するが」とあるが、圧力を受けて路頭に迷うとか精神を病むではなくて本当に良かった。不幸中の幸いである。(アカハラはそれだけ怖い)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
なお、本評論の電子版の所在については(1)はいのうえなち(@inouenachi)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月13日
氏、(2)巫俊(ふしゅん) (@fushunia)氏にご教示賜った。改めてお礼いたします。
【博物館学】
桒原 (くわはら)良輔 , 仲間 信道, 野田 聖 「図鑑 日本のむかで」 — 本書の問題と解決すべき課題
じつは先の仏教史の論争の同時期に、理系の方で話題になっていた論文。時事物を続けて扱ってアクセス数稼ぎをしたわけではないよ(ちなみにはアクセス数はそこまで多くなかった。やはりムカデはみんな興味ないのかしらん)
アカハラもだけど、こちらの「誤りの多い事典」問題は研究としては重篤な問題な気がする。
#一日一論文 桒原 (くわはら)良輔 , 仲間 信道, 野田 聖 「図鑑 日本のむかで」 — 本書の問題と解決すべき課題 https://t.co/EAVWbmBEwi
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
2023年8月に刊行された奥山風太郎『図鑑日本のむかで』(太田出版)に関する問題点を上げ、また解決する方法について提案を行う。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
本論文によると、同書には160 ページの中に 100 カ所を超える誤りがあり、出典がなく、とりわけ分布情報については正確な判断が難しいとのこと
基本的な図鑑に誤りが多い場合、レファレンスなどではどのように対処したらいいか?(何も知らない司書なら参考書として、この本を上げる可能性は高い)、まさに「他に類書がないことから影響が大きく,誤りの拡散が強く懸念される」ことはものすごく懸念される。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
大変だと思うが、早めに出版社は正誤表などをだしてもらう。あるいは本論文を当該図鑑の付録につけて、利用の際の注意喚起をするなどすべきかもしれない。(ただ太田出版、サブカル系の出版社だし、たぶんそこまで労力はかけないんじゃないかな…)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
アウトリーチとして『読み物系図鑑のブームや、今回のように専門家というよりマニアが図鑑を作成する事例は今後もどんどん増えていくし、それ自体はアウトリーチの観点からもけっして排除すべきことではないとは思うのだけど、論文の最後の「どうすればよかった」のかの項はとても重要な意見となる。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
・図鑑を標榜するのであれば,著者自身がムカデの分類や図鑑の作成方法を十分に学んだうえで執筆に臨むか,それらに精通し
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
た人物に協力を仰ぐ必要があった
・明らかに著者や出版社による校閲不足である.
という問題の指摘と
「調査のために文献が必要なのであれば,我々は協力を惜しまないつもりである.小さなものから少 しずつ信用と実力を積み重ねていくのがよいのではないだろうか」という提言は、虫ヤとしての連帯感を示したいい言葉だと思う。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
なお類似の問題としては、本論文にもあるが
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
太田 英利, 増永 元, 佐藤 寛之, 安川 雄一郎決定版日本の両生爬虫類: 待望の一冊, いやちょっと待て… https://t.co/5852vM5u28
(専門家の協力があったが、あくまで協力程度あり十分に機能していなかった事例)
奥野, 淳兒 書評 : ネイチャーウォッチングガイドブック ヒラムシ 水中に舞う海の花びら https://t.co/TB8bgArdsv
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月14日
(分類や分布の記述に問題があった事例)
などがあるようである。
以上が2023年12月前半の一日一論文。
このまとめ、正月休みに一ケ月分をまとめて作ったけど、普段からちまちま作った方が楽だな…一月からはそうしよう…