今月から、#一日一論文 として、毎日1本、論文の紹介と概要、評価・感想を記してTweetしている。(平日のみ。。土日祝はお休み.調査とかいきたいし)
自分の研究の備忘とブラッシュアップと、面白い論文を他の人に紹介したいということで始めてみた。
酒やごはんのtweetと違って、バズったりはしないが、やっていると面白い論文が見つかったり、時々コメントをもらったりするので、励みにもなって面白い。
ただ、Twitter(X)だけだと、すぐ下に流れてしまって他のtweetに埋もれてしまう。
なので、月一回、まとまったらはてなブログの方でもTweetの一覧を張り付けて参照に便利なようにしようと思う。
皆様適宜活用ください
- 鍼灸師とはり灸に係る法制度の変遷 : 医制成立から現在にいたるまで
- 長野県上田市における食文化の変容
- 松岡 喜久次 埼玉県小川町~東京都青梅市の寺院にある 石灰岩でつくられた近世の石造物
- 松岡喜久次 埼玉県立川越女子高等学校の庭石 ―ドロストーンとチャート
- 小林慶太郎『四日市とんてきとまちづくり: 食によるまちづくり試論』
- 岡崎 梓織 滋賀県における民俗宗教的聖地の展開
- 坂口, 正彦 近代日本の「むら社会」─滋賀県各町村の相互扶助とつきあい関係─
- 鑑定から鑑賞へ 人と書と歴史を探究する 文/増田 孝 第2回 〈写しの文化〉と〈書への憧れ〉
- 伊能秀明 内藤家文書に見る 「桜田門外ノ変」 異聞 大老井伊直弼の奮闘-狼藉者は井伊様御手にて都合九人ほど取押え
- 澤登 芳秋 ⽴川でウドを作る:継承財としての農業空間
- 津村 文彦・黒川 洋一・宇多川 隆・亀田 勝見・杉村 和彦・宇城 輝人酸味を考える―酸っぱいものはカラダに良いのか?―
- 中国における酢の生産と研究
- 松永 一彦 GI登録された「鹿児島の壺造り黒酢」
鍼灸師とはり灸に係る法制度の変遷 : 医制成立から現在にいたるまで
ほうろく灸のリストを作成する過程で読む
#一日一論文
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月13日
鍼灸師とはり灸に係る法制度の変遷 : 医制成立から現在にいたるまで | CiNii Research https://t.co/k2yDdIcggg #CiNii
最近少し調べているほうろく灸がらみで読む。明治以降鍼灸師がどのように法的に位置づけられてきたか、整理し、また現行の問題点にも触れる。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月13日
以前、柔整復師の方に、「柔整は法律を整備する際に医療ではないとされたけど、当時柔術家の代議士がいて、医療に入ることになった。一方、鍼灸はそれがなかった」という話を宴会で聞いたのだけど本当かしらん?柔道接骨術公認請願運動のことかな。これも要確認https://t.co/zpCZ2AeJJO
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月13日
長野県上田市における食文化の変容
#一日一論文
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月13日
面白い論文を見つける。
長野県上田市における食文化の変容
-地域ブランド「美味だれ焼き鳥」を事例に-https://t.co/BXdrpyn7GA
信州上田の美味だれ焼き鳥の地域ブランドの展開にと食文化の変容を記す
この論文では「1959年に開業したある焼鳥店の店主が,1960年代にニンニクが入った醤油味のたれを用いる調味法を考案した」と鳥正が考案したという「美味だれ」の正史に基づいた記述になっている
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月13日
ただ、(1)内臓肉の利用・(2)ニンニクの多用・(3)戦時中上田が軍需産業の町だったことから、美味だれ普及の素地として、戦時中の朝鮮人労働者の影響があると私は推測してるのだけど、実際どうなんだろ。いずれ聞き取りしてみたいところ
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月13日
松岡 喜久次 埼玉県小川町~東京都青梅市の寺院にある 石灰岩でつくられた近世の石造物
多摩に関する講義に関連して読む
#一日一論文
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月14日
松岡 喜久次 埼玉県小川町~東京都青梅市の寺院にある 石灰岩でつくられた近世の石造物https://t.co/fr0IrBIJ1e
埼玉県小川町~東京都青梅市など関東平野の西縁部の寺院の石灰岩ならびにドロストーンの石造物(主に灯篭・墓石・馬頭観音など)を調査したもの。
石灰岩の石造物への利用は、一部石垣などで使われるケースを除いて気づいていなかった。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月14日
「石灰岩でつくられた石造物は,埼玉県の小川町,越生町から飯能市を経て東京都青梅市までの関東平野の西縁部の寺院にみられる(中略)それぞれの地域で東方に向かって減少」という分布図はとても分かりやすい pic.twitter.com/cRJnYdpZX5
松岡喜久次 埼玉県立川越女子高等学校の庭石 ―ドロストーンとチャート
#一日一論文
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月15日
松岡喜久次 埼玉県立川越女子高等学校の庭石 ―ドロストーンとチャート―https://t.co/jlLHDIhFET
昨日の「埼玉県小川町~東京都青梅市の寺院にある 石灰岩でつくられた近世の石造物」の「ドロストーン」がわからなかったので検索したもの。同じ筆者によるドロストーンの解説。
こういう風に庭石や石造物の石が判別できるのあこがれる。石材の見分けとか化石の判別できるようになりたい
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月15日
小林慶太郎『四日市とんてきとまちづくり: 食によるまちづくり試論』
みどり食堂の日替わりが四日市とんてきという聞きなれない料理だったので読む
#1日1論文 小林慶太郎『四日市とんてきとまちづくり: 食によるまちづくり試論』https://t.co/TfXsdnYSw1
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月16日
三重県四日市市のB級グルメ、「四日市とんてき」の普及活動の報告。
四日市の市役所の自主研修グループからはじまり、協会の結成、B-1グランプリ出場までの経緯を書く
四日市は四日市ぜんそくのイメージがあるが、マイナスイメージは「まちづくりを行う住民にも悪影響を及ぼす」とし、内外からイメージを変える必要のあることを示す。これは他の地域の「まちづくり」を考えるうえでも重要である。四日市の水道の事例も興味深い
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月16日
文注引用のジェームス・W・ヤング『アイデアの作り方』は未読なので読む。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月16日
同書に記載された5段階の工程で四日市トンテキのアイデアが作られていく姿は面白い。
四日市が萬古焼の産地というのも知らなかった。(万古焼Wikipediaを見ると、リチウムの高騰と萬古焼の原料問題もある。こちらも面白い)
もう一つ、この記事では東岡崎と四日市の家賃比較や「津できることが四日市にできないことない」といった記載から、四日市の地理的位置づけ(どこと張り合ってるか)が見えて面白い。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月16日
なお、先日の長野上田の美味だれとまちおこし論文でも思ったのだが、この四日市トンテキの記事も、「なぜ、四日市でトンテキが食べられているのか」という歴史についてはほとんど触れられていない。https://t.co/umcDmUVmYq
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月16日
協会によると「黒っぽい色の味の濃いソースが絡められていること」など4項目の定義があるようだが、なぜこうなったか?トンテキの歴史や他の地域のトンテキとの比較なども行えばいいのにと思う(あるいは「B級グルメ」はそうした文脈とは無縁のものなのか?)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月16日
ちなみに類似の料理で、神奈川県厚木のとん漬け(豚の味噌漬け)は、料理の由来や養豚業の流行などと絡めた説明をしているhttps://t.co/KoC8Q2ahGp
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月16日
岡崎 梓織 滋賀県における民俗宗教的聖地の展開
滋賀の調査地に近い当たりの論文なので読む。あまり滋賀の過疎については考えたことがなかった。
#一日一論文 岡崎 梓織 滋賀県における民俗宗教的聖地の展開https://t.co/fiOxjHaxYy
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月20日
滋賀県彦根市男鬼町の比婆神社と近江八幡市牧町藤ヶ崎龍神を事例として、集落が過疎化する中で新たに入り込む宗教者や集落外の信仰者との関係性(信仰圏の拡大や祭祀圏の変化)を示したもの
前者では離村により、地元住民から新しい講集団に祭祀が移った例、後者では講員などの衰退に対し、新しい信仰集団ができ、祭祀権をめぐる争いが表面化した例を取り上げる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月20日
自分の調査地に近い事例なので読む。研究対象が異なることもあり、、あまりこうした小さい講集団や宗教者、拝み屋みたいな人の影響は気づいていなかったが、石田町や米原市中多良といった、自分が調査した調査地の宗教者の話も出ており、視点に漏れがあったことに気づかされた。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月20日
そういえば、滋賀県長浜市名越を共同調査した時に、共同調査した韓国の留学生が扶桑教の白玉稲荷教会の方からケサランパサランを見せてもらっていたのを思い出す。真宗の濃い地域でも民間宗教者はちゃんとあるのだ。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月20日
また、以前東近江の狐憑きと宗教者の事例に関するにも、狐憑きの事例とともに山村の宗教者の事例が出ていた
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月20日
滋賀県湖東一村における狐憑きの生成と変容 : 憑依表現の社会 宗教的,臨床的文脈https://t.co/2ZLhLruXOf
また、彦根市男鬼町比婆神社、昭和初期より「近江高天原説」を説いた橋本犀之助の関係者や研究者が訪れているというのも面白い。昔、話者の家で橋本氏の本を見せてもらったのだった。機会あったら一度行ってみよう。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月20日
坂口, 正彦 近代日本の「むら社会」─滋賀県各町村の相互扶助とつきあい関係─
#1日1論文 坂口, 正彦 近代日本の「むら社会」─滋賀県各町村の相互扶助とつきあい関係─https://t.co/6wmKuOx0bE
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月21日
近代日本の「むら社会」(村落社会)における相互扶助慣行とつきあいについて、滋賀県学務部社会課「生活改善調査」(1922-23)を用いて、分析したもの
相互扶助慣行全般についは、1920 年代前半期において日常ではなく、災害・病気・応召といった「非常」時に扶助が現出する。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月21日
また葬儀を挙げる町村が多く、親戚に先んじて近隣が葬儀を扶助する事例、会葬者の休憩所として近隣の家が提供される事例が見出せたが、地域などを限定する必要があるとする
一方、新年における廻礼、年酒招待をでは関係国家の政策(民力涵養運動)による生活改善、虚礼廃止を一因として、つきあいの方法が変化したことを判明させた。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月21日
滋賀県学務部社会課「生活改善調査」(1922-23)の史料は未確認なので見る必要あり。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月21日
別の観点で見ると、もっと情報が引き出せそうな気がする
私の研究している「飯券」「切符」の事例も記載がある模様。
酒券となっているがこれは今までなかった事例なのでどこのムラか見なくては
なお滋賀県立公文書館…土日祝休みだ…有給か夏休みつかっていくしかないな…とほほー…
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月21日
また参考文献のいくつかも未読のものがあるため、要確認。
鑑定から鑑賞へ 人と書と歴史を探究する 文/増田 孝 第2回 〈写しの文化〉と〈書への憧れ〉
とある古武術の先生(研究者)の没義道な話を聞いてしまい、つい紹介する。
ただでさえ研究者の我々は、贋物に悩まされるのに、それを増産するのはさすがに没義道である。(せめて●●写とすればよいのに…)
#一日一論文 鑑定から鑑賞へ 人と書と歴史を探究する 文/増田 孝 第2回 〈写しの文化〉と〈書への憧れ〉と https://t.co/moYhLMU6UC
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月22日
歴史史料は〈写本の文化〉によって支えられてきており、また、それとともに書跡により故人を追慕する文化が、平和になった江戸期より成立したことを平易に解説
「歴史史料の写しをとるなどの場合には、紛らわしさを防ぐための決まりがある。(中略)たとえば、写し文書の末尾には、もともとある花押を真似たりなどせず、「在判《はんあり》」などとしておく。そうすれば、それにより良心的な写本であることを明示できる」
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月22日
なんでも鑑定団などで活躍される増田孝先生の一連エッセーはとても面白いのでお勧め。(なぜ今日の #一日一論文 でこれをひいたかは読者の想像に任せます。「良心的な」研究者でありたいものよ)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月22日
伊能秀明 内藤家文書に見る 「桜田門外ノ変」 異聞 大老井伊直弼の奮闘-狼藉者は井伊様御手にて都合九人ほど取押え
やはりやろうと思ってる絵画資料の研究の一環として読む
#一日一論文 伊能秀明 内藤家文書に見る 「桜田門外ノ変」 異聞 大老井伊直弼の奮闘-狼藉者は井伊様御手にて都合九人ほど取押え https://t.co/VQ7lOjqETv
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月24日
陸奥国磐城平藩・日向国延岡藩の譜代大名内藤家の古文書より、桜田門外の変に関する資料群の翻刻と紹介
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月24日
第一報、井伊家から内藤家への奉札では、直弼が襲撃されるも「狼藉者、井伊様御手にて都合九人程取押え候由」と直弼自らが襲撃者を取り押さえたことを記す。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月24日
その後閏三月二十九日に幕閣に末期養子届が出され、晦日に病気のため直弼が死んだことを記す。
これらは、いずれも、事実ではなく直弼の死を偽装する文書であるが、家督継承、体制維持のためにどのように幕府と連絡が行われたかがわかり興味深い。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月24日
なお、本論文には、桜田門外の変の目撃談や桜田事変絵巻などの翻刻もある。
襲撃者をばったばったと取り押さえる、直弼。ちょっと見てみたかった
澤登 芳秋 ⽴川でウドを作る:継承財としての農業空間
多摩の講義資料の一つとして読む。
ウドの穴蔵一度見てみたい。
#一日一論文 澤登 芳秋 ⽴川でウドを作る:継承財としての農業空間https://t.co/whcUtnqU9s
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月27日
立川における軟化ウド(東京で生産される、白いウド)の生産について、ウドの栽培史、ウドの農家のライフヒストリーなどの調査を行ったもの。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月27日
また、都市農業をマイナーサブシステムとしてとらえ、立川のウド栽培においては、「ウドムロ」が継承財となって継続、継承に寄与している姿を明らかにする。 pic.twitter.com/MzmvwKHAUx
マイナーサブシステム=経済的な意味が⼩さく、労働としても厳しい活動であるにもかかわらず、当事者たちの意外なほどの情熱によって継承されてきたもの
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月27日
ウド栽培の歴史。当事者へのインタビューなど非常に詳細な記録で分かりやすい。東京のウド栽培だけでなく、もう一つ都市のウド栽培として、大阪茨木一の三島ウドについても記載あり。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月27日
戦前は東京のウドは立川でなく、吉祥寺やその近辺(練馬区大泉や杉並区⾼井⼾や井荻など)がウドの本場として有名であり、その後、多摩の各地域に広がったとのこと。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月27日
生産者としては、東京都のウドはムロで栽培しているから他産地よりも柔らかい。この点を評価してもらいたいという思いが強いものの、市場では⽩いという外⾒が⼀緒であれば全て同じものとして扱われてしまうという記載は興味深い
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月27日
「現在の収⼊⽐率は不動産:農業=9:1 であり、相続などの問題により、結局農地が減ってしまうという都内の都市農業の問題もよくわかる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月27日
またフィギアの壽屋が、⽴川の企業で、地域貢献としてウドのキャラクター「ウドラ」のグッズを販売しているのは知らなかった。
ウドラhttps://t.co/WZB7g8kqKz pic.twitter.com/rxZAjSjF5R
津村 文彦・黒川 洋一・宇多川 隆・亀田 勝見・杉村 和彦・宇城 輝人
酸味を考える―酸っぱいものはカラダに良いのか?―
前日のTLに山西亭の話が出ていたので、つい黒酢関係の論文を読む。とてもこれは良い論文だった。
#一日一論文 津村 文彦・黒川 洋一・宇多川 隆・亀田 勝見・杉村 和彦・宇城 輝人
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
酸味を考える―酸っぱいものはカラダに良いのか?―( 福井県立大学論集39号, 2012)https://t.co/3Xuwn2Z592
文化的に人間が酸味を好むようになった過程と、日本、タイ、中国、ヨーロッパ、タンザニアの酸味観を解説。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
世界の酸味文化圏を(1)酢―酢酸食文化圏(2)果実―クエン酸食文化圏(3)乳酸(ヨーグルト)食文化圏の三つに分けて捉える見方を示し、酸味の文化的多様性を示す。
その上で、「酸っぱいもの=酢がカラダに良い」という言説は、製品としての酢が流通するようになった近代以降強化された健康言説であり、日本では1960年代、商業主義のもとで酸味と健康を結びつけたフードファディズム的な言説が形成されたとする。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
工場で作られた酢飲料を毎日飲むというのは、きわめて現代的、日本的な発想であり、世界各地の食生活に視野を広げると、果汁由来の酸味や、家畜乳由来の酸味を、その他の味をもった食物と組み合わせながら摂取するのが、伝統的な酸味との付き合い方であるとする。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
酸味の文化については今までの嗜好品研究でもあまり類例がなく、また世界的な酸味観を研究した非常に面白い論文。ぜひおすすめ。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
久しぶりに論文読んでドキドキした。自分もこういう研究したいものじゃ。
以下、あまりに面白いのでメモの抜き書き(長くなります)
【日本の酸味観】
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・日本人の酢と健康をめぐる身体観は、1960年代以降、メディアと商業主義を通じて徐々に作り上げられてきた
・酸味を積極的に使った日本の料理は、酢を用いた「酢の物」ぐらいで、多くの場合、酸味はジュースやデザート類として果実・果汁から摂取
【日本の酸味観】
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・日本人の酢と健康をめぐる身体観は、1960年代以降、メディアと商業主義を通じて徐々に作り上げられてきた
・酸味を積極的に使った日本の料理は、酢を用いた「酢の物」ぐらいで、多くの場合、酸味はジュースやデザート類として果実・果汁から摂取
・日本の場合「酸っぱいもの」は身体によいといわれながらも、現実的には酸っぱいものを日常の食事のなかで取ることはあまりなく、嗜好品のかたちで摂取
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
【タイ】
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・酸味調味料として多く用いられるのは、タマリンド(makham)やマナオ(manao)
・酢の利用は中国料理の影響が大きい
・日本のように酸味が健康と結びつけて捉えられている様子はまったくみられず、「あっさり」が健康に良いと強く考えられている
・果実由来の酸味が豊富に用いられている
【中国】
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・酢を多用
・ただし酢の酸味のみを強調した料理ではなく、多くの場合は甘酸っぱい味、辛酸っぱい味などといったように、他の味覚と調和させた味覚を重視
・酸味の健康に対する有効性を情報として認知し肯定
・酸味を積極的に摂取しようという実践にまでつながる場合は多くない
【ヨーロッパ】(フランス)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・ヴェルジュ(未熟ぶどう果汁。酢よりも強い酸味を示すが、現在はほとんど用いられない)、各種酒類から作られる果実酢(ワインビネガーなど)、果汁から直接作られる果実酢(バルサミコ)、柑橘類果汁などがみられる
・中世ヨーロッパは「酸味の時代」
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・中世フランスは他地域と比べてとりわけ酸っぱく辛い料理文化であった
・17世紀フランスにおいて料理における「革新」が生じた
・ソースとそれを油脂類で「のばす」技術が開発されたことによる。
これにより、強い酸味、刺激的な味が抑制され、主食材の持ち味を生かし引き
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
立てる料理法へと転換することになった。それ以来、酸味は油味と組み合わされ、ソースのベースなかんずくサラダドレッシングとして発達を遂げる
・中世における食材のいかんにかかわらず特権的に嗜好される味覚から、近世以降の、甘味と油味との組み合わせによりコントロールされた、食材を引き立てる調味料へと、位置づけが変化
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・酢や酸味は料理だけでなく医療や科学的な利用も
1)酢―酢酸食文化圏
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
酸味を摂取するのに酢を使う文化圏
その地域にアルコール発酵に供される良好な原料と、醸造酵母がアルコールを生成できる温暖な土壌と、酒がさらに酢に発酵される酢酸発酵が成立する気候の3つが存在する必要がある
ヨーロッパと東アジアの中国、日本などがこれらの地域に含まれる
(2)果実―クエン酸食文化圏
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・気温が高く、酢の原料であるアルコール発酵が成立しにくい地域に多い。
・酵母は暑さに弱いため、これら熱帯地域では良好な酒を造ることが難しいが、季を問わず豊富な果実がいたるところで得られるために、酸味の摂取を果実から行うことが容易
・今でこそ、果実は改良されて酸味が抑えられているが、野生種の果実は極めて有機酸含量が多く、強烈な酸味を呈している
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・熱帯の高温で体力の消耗が激しい地域では、最適な酸味料。
(3)乳酸(ヨーグルト)食文化圏
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
・アルコールの醸造原料に乏しく、また酸味を有する果実なども入手しにくい乾燥地域では、家畜の乳を発酵させたヨーグルトを酸味料として現在も利用
・古代より遊牧生活をしている中央アジア、西アジアなどの地域がこれにあたる
・アルコール発酵原料があったとしても、遊牧生活のために、人びとの移動が激しく、発酵管理が困難な地域
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
「酸っぱいもの=酢がカラダに良い」という言説は、製品としての酢が流通するよ
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
うになった近代以降により一層強化された健康言説である。酢のもつ生化学的な作用について、多くの人びとはけっして正確に理解しているわけではない。
4章で論じたように、1960年代の日本において、商業主義のもとで酸味と健康を結びつけたフードファディズム的な言説が形成されたが、50年後に生きる多くの人びとが科学的な観点から批判的に捉え直し、そうした言説から解放されたとは到底いえないだろう
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
果汁由来の酸味や、家畜乳由来の酸味を、その他の味をもった食物と組み合わせながら摂取するのが、伝統的な酸味との付き合い方である。「酸っぱいものはカラダに良い」を文字どおり実践するために、工場で作られた酢飲料を毎日飲むというのは、きわめて現代的、日本的な発想
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
あまりに面白い論文だったので、抜き書きも含めて紹介してしまった
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月28日
中国における酢の生産と研究
同じく黒酢の論文。
山西亭の黒酢料理が食いたくなったので、今日は黒酢に関する論文を#一日一論文 王麗麗, 王愛莉, 李再貴 - 生物工学会誌 seibutsu-kogaku kaishi, 2012
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
中国における酢の生産と研究https://t.co/sz6qkhkrYB
中国における酢の生産について、歴史や種類、生産の現状・利用などを記したうえで、機能性や血栓溶解性などを記す。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
10年前の論文だが、中国の酢の生産については、日本語文献が少ないので、参考になる。
中国には四大名酢(山西老陳酢,鎮江香酢,福建永春紅曲米酢,四川保寧フスマ酢)また、彰徳陳酢,天津独流陳酢,浙江米酢,湖南常徳陳酢といった八大名酢があるとのこと
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
「中国の酢の生産は地域性が非常に強い.山西の太原や江蘇の鎮江は酢生産の代表的な産地であり大企業も成立しているが、山西太原のほうはまだ道端で酢を作って売る家庭企業がいたるところで散在している」
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
というのは面白い。
「鎮江香酢の機能性は10 年ほど前から研究テーマに上がり始めたのに,山西老陳酢に関しては,研究歴史が 5 年ほどしかなかった」
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
というのも大きいメーカーがないからであろう
また、「インフルエンザにかかると,部屋で酢を蒸発させ,殺菌するのが慣例になっているが,2003 年 SARS のように原因不明な状況では,スーパーから最初になくなったのは酢であった」とあるが、今回のコロナでも同じような状況が見られたのではないだろうか。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
論文の問題点として、山西老陳酢の血栓溶解特性については、フィブリン溶解作用を生理食塩水と比較しているけど、酢の抽出物のpH(酸性)にもよるのじゃなかろうか。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
素人考えだけど、他の酸性の抽出物とも比較した方が良いのではとも思った。
また冒頭に「“添油加醋”という言葉で表されるように,酢は生活の味を豊富にする」とあるけど、添油加醋は「話におひれをつける」というマイナスイメージの言葉だから、「生活の味を豊富にする」には使えないんじゃないかしら。(論文著者が日本語を間違えているのだと思う)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
なお山西老陳酢の製造については、こんな取材記事があった。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月29日
わかりやすい。今度、山西料理食いたい
特集 山西省 黒酢と麵の旅 SIGNATURE2017年12月号 「山西老陳酢の特徴の薫バイ工程も記述有。これも確かに独特であるhttps://t.co/1qMyPcw9wJ
松永 一彦 GI登録された「鹿児島の壺造り黒酢」
薩摩の壷酢も見に行きたい
#一日一論文 松永 一彦 GI登録された「鹿児島の壺造り黒酢」https://t.co/ucQtPkqw2T
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年11月30日
昨日に引き続きお酢関係の論文
平成27年に鹿児島の壷造り黒酢がGI登録(「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」)されたのに関して、黒酢の歴史・製法・成分の特徴をまとめたもの
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福山町と隣接する隼人町の黒酢メーカー 7 社で組織する「鹿児島県天然つぼづくり米酢協議会」が登録。
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江戸時代より作られ、以前は「福山酢」あるいは「壺酢」の愛称だったがが,昭和 50 年にその琥珀色の外観から「黒酢」と呼ばれるようになった
黒酢のルーツは和泉酢(現在の大阪府南部でつくられた米酢)を起源としており、福山の商人竹之下松兵衛が旅行先の日置地方で出会った色酢の製法を持ち帰り,1820 年頃(1805 年の説もある)に大仕掛けに製造を開始したのが黒酢の始まりとされる。
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福山の港は上納米の集積地であった.宮崎県都城や大隅半島産の大量の米が鹿児島城下へ輸送されたため,その中継地であった福山では原料米を容易に入手することができた.また,姶良カルデラの周縁に位置する福山にはシラス土壌を浸透した良質の地下水があり,
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さらに日置市伊集院町で作られていた苗代川焼き(薩摩焼)の壺も黒酢を作る容器として欠かせなかった.
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福山は鹿児島湾奥を眺める南向きに面し,冬場でも比較的温度が下がりにくい温暖な地域である.今でも春秋 2 シーズン仕込みが行われているが,微生物のはたらきが高まる最適な温度環境,そして年間を通して温度変化の小さいことが黒酢づくりに適していたとする
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小論だけど、地域の産物が地理と密接に結びついてることを示すいい例だと思う。
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いつかはこの鹿児島の黒酢(壷酢)づくり見学に行きたい
今月は以上である。
11月の半ばからだけど、頑張って12月も続けたい
こういう試み、やっている人他にもいるかと思ったけど、紹介だけでなく、感想まで書くのは意外と少ない。(2023年11月現在、#一日一論文のタグを使って毎日内容まで書いてるのは私くらい)
タイトルの紹介だけをしているtweetやアカウントはあるが、概要や評価・感想まで書いているTwitterアカウントは少ないようである。
修士の院生などの勉強法としては、結構おすすめな勉強法になるんじゃないかと思っている。
また一日一論文については以下のサイトが参考になった。
とくにこのTabelog Developer Dojoの中にある、よしおかひろかた氏のスライドは面白い(Tech系は専門外だけど、こういうTech系のスライド見るのは好き)
あと、Tweetをブログに貼れば、かんたんにまとめができるぞ気づいたのは、このサイトのおかげ。
とても面白いサイトなのでおすすめです。
まあ、研究者が論文読むのは、棋士が練習で詰将棋解くようなもんである。
一番大事なのは試合に勝つ(論文を発表する)なので、執筆も頑張らねば。