12月後半の一日一論文をまとめる。
この期間は、かなり食文化関連の論文を中心に取り上げた。
なかでも麻婆豆腐論文がプチバズったのはびっくりした。みんな麻婆豆腐好きねえ。
写真は赤坂の陳麻婆豆腐の麻婆豆腐賦。
- 【食文化】【中国料理】
- 福留 奈美、小磯 華織 日本における麻婆豆腐の伝来と受容-調味料・香辛料によるタイプ分類
- 中林 広一 失われた麻婆豆腐を求めて
- 謝春游 食のグローバル化における四川料理の海外展開一日本の「四川飯店」とオーストラリアの「水井坊四川酒楼」の事例を中心にー
- 浜本篤史 園田茂人 現代中国における日本食伝播の歴史と力学一北京の日本料理店経営者を対象にしたインタビューから-
- 松本 淳ほか 日本地理学会2018年秋季学術大会シンポジウム報告 「食の人類史からみたモンスーンアジアの風土を読む」
- 堀越昌子 野間晴雄編(滋賀大学教育学部滋賀の食文化調査研究班) 滋賀の伝統的食文化図録
- 童 江明,李 幼均,伊藤 寛 中国の醤
- 【地理学】【民俗学】
- 【生活改善運動】
【食文化】【中国料理】
福留 奈美、小磯 華織 日本における麻婆豆腐の伝来と受容-調味料・香辛料によるタイプ分類
#一日一論文 福留 奈美、小磯 華織 日本における麻婆豆腐の伝来と受容-調味料・香辛料によるタイプ分類https://t.co/4RCXXCoYre
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
麻婆豆腐の日本への浸透と現代日本でどのような麻婆豆腐が作られているのかを、調味料・香辛料の使い方
によってレシピ分析と麻婆豆腐の素の収集により分析したもの
論文のリンクが梗概のリンクになっていたので追記#一日一論文 福留 奈美、小磯 華織 日本における麻婆豆腐の伝来と受容-調味料・香辛料によるタイプ分類https://t.co/JNw0sHTU4V
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
四川飯店の陳健民より前に、王馬熙純(おうま・きじゅん)が専門書にて麻婆豆腐の紹介をおこなっていることが判明。ただし、一般への浸透は陳建民の影響が強い。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
レシピ本では1970 年代に大学の調理実習書での取り扱いが増え、1980 年代以降はグルメ雑誌や料理人・料理研究家による一般向け料理本での取り扱いが増加した。高校家庭科教科書への掲載は 1990 年代半ばに始まった。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
麻婆豆腐の浸透は1950 年代後半に中国料理人陳建民の飲食店メニューによる紹介に始まり、1960 年代には王馬熙純、陳建民他による料理番組や中国料理専門書での紹介、1970 年代にはレトルト製品「麻婆豆腐の素」発売と調理実習書での取り扱いの増加
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
1980年代以降はグルメブームとマスメディアによる情報発信に後押しされて、麻婆豆腐は外食メニューから家庭内調理に至るまで広く浸透した。そして、平成を経て令和時代に入り、本場のよりオーセンティックな麻婆豆腐が注目されると予想する。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
調味料・香辛料の使用実態による分類を試みた結果、味噌や甜麵醬等の調味料使用によって「日本風」「中国風」に大きく 2 分類されることが判明。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
日本における中国料理の受容について、先行研究がちゃんとなされてていて参考になる論文。
岩間一弘:「螺螄粉(タニシビーフン)とガチ中華-皿の上の中国と日本(特集 習近平新時代共存の道は)」『世界』第 966 号, pp.135-139(2023)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
と
河原一久「千夜一夜の食べ物語⑦ 日中戦争が遅らせた麻婆豆腐の日本上陸」, 斎尾親徳,『通信文化』, 公
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月15日
益財団法人通信文化協会, 東京, pp.36-37(2020)
を目を通しておきたい
なおコメントにある王馬熙純はこのような人物。
王馬 熙純さん|料理家レシピ満載【みんなのきょうの料理】NHK「きょうの料理」で放送のおいしい料理レシピをおとどけ!
戦前、ハルピンから来日してピアノ演奏家となり、ハルビンに戻った後、戦後再び来日して、中華料理の指導に当たるという数奇な運命な方である。非常な名家の出なので、1950年来日したのは、たぶん中華人民共和国による地主階級・資本家階級への迫害を避けてとのことだと思うがどうだろう。
中林 広一 失われた麻婆豆腐を求めて
日本における麻婆豆腐の伝来と受容論文が結構、表示回数も多かったので、二匹目のドジョウを狙って、麻婆豆腐がらみの論文をもう一本掲載する。
#一日一論文は表示回数が100~200前後だけど、これは、7.6万ビュー、リツイート293、いいね565(1月11日現在)とプチバズ状態となった論文。
一日一論文、あまりツイートする意味ないかなとも思っていたけど、この反響を見て、やる気が出た。
なお後述するが、本論文は中国側の資料の確認が足りないところがあるので、読む際には注意が必要かと思っている。
#一日一論文 中林 広一 失われた麻婆豆腐を求めてhttps://t.co/Xhw0pdcikH
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月18日
中国における麻婆豆腐の伝承と実態および日本への伝播、普及と食品産業について整理し、「文化の生成・受容・変容」について検討した論文 pic.twitter.com/Qj1xKPlaeB
婆豆腐について、中国の伝承を確認し、現在四川で提供される一般的なレシピの【四川版】、清代『芙蓉話旧録』に出て来る【四川原版】(肉は必須ではない)、そこから発展した【陳興盛飯舗版】について整理した表が非常に興味深い。 pic.twitter.com/RI1W3lWQf6
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月18日
陳健民による麻婆豆腐の日本伝来と普及についても【日本店舗版】【日本家庭版】【レトルト版】と変化がみられることを示す。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月18日
麻婆豆腐を材料に、料理(文化)の「真正性」というのは何かを検討するのは面白い。
ただこの論文、非常に面白いが、中国側の資料の博捜が少ないようにも感じている。
この点は 川味 @chuanweikoji 氏からもご指摘をいただいた。読む際には注意が必要と思っている。
この表については中国側の資料に取り上げるべきものが多いので、日本でどう捉えられていたかどう広まったかの補助的なものとして考えたほうがよいです。 https://t.co/31lCY1pssQ
— 川味 (@chuanweikoji) 2023年12月18日
ありがとうございます。麻婆豆腐発祥の伝承については中国側の論文や資料をもっと博捜した方が良いということでしょうか?(たしかにこの表に未記載の文献は多そうです)
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月18日
謝春游 食のグローバル化における四川料理の海外展開一日本の「四川飯店」とオーストラリアの「水井坊四川酒楼」の事例を中心にー
三匹目のドジョウというわけではないけど、同じ系統で中華料理論文を掲載する。
これはあまり伸びず。日本の四川料理のローカライズと、オーストラリアの四川料理の比較というとても面白いテーマなのだけど。
みんな、「麻婆豆腐」という料理には興味はあるけど、総体的な中国の食文化については興味を持つ人はそう多くないということか…
「麻婆豆腐やエビチリといったなじみのある料理は売れるけど、それ以外の知名度の低い四川料理はなかなか売れない」という話を四川フェスで聞いたが、それと似た感じかもしれない。
#一日一論文 謝春游 食のグローバル化における四川料理の海外展開一日本の「四川飯店」とオーストラリアの「水井坊四川酒楼」の事例を中心にーhttps://t.co/TxV8LvCxJ1
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
四川飯店のグローバル化、ローカライズ化について、広島四川飯店とオーストラリアの水井坊四川酒楼を比較調査したもの。2018年の論文。赤坂の四川飯店本店でなく、広島の姉妹店を調査したのは気になったが、筆者によると、広島の方がより「日本人の舌に親しみやすい料理」とHPで訴えているからとのこと
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
広島が調査先になったのは、実際には許可がたまたま取れた、調査地がアクセスしやすいなどなのかもしれないけど、こうして理由付けをするのは大事である。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
なお、オーストラリアの取材対象は広島と同じく地方都市にするためブリスベンの状況を確認したとのこと
日本の四川料理が西洋料理の盛り付けなどの影響を受けて四川の本場やオーストラリアとも異なり、ソース料理となっているというのは大変面白い指摘。特にエビチリはソース料理という考えはなかった
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
食材も、広島ではまだガチ中華がそこまで受け入れられておらず、最も麻の強い花椒は通常使用されていないとのこと。また酸味についても本来は、泡菜などの発酵食品で酸味を出すべきであるが、日本では酢で酸味を出す方式になったという指摘も面白い
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
オーストラリアでは、1990年代初めまで四川移民は少なく、四川料理であっても広東に近い料理であった。水井坊は2002年にシドニーで開店。中国がWTOに加盟し、オーストラリアでも中国食材や調味料が手に入りやすくなったとのこと。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
中国料理の浸透が遅かったことから、オーストラリアではそこまで現地化されておらず、四川の味に近いものが出される一方、紅焼肉が甘口になったり、またオーストラリア独自の食材を四川料理化する試みも行われている。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
「四川料理は百菜百味と言われていたように、味型が非常に多様であるので、他の料理に融合しやすい特徴がある。しかし、その融合とは元々ある四川料理を地元の料理へ変容するのではなく、地元の料理要素を四川料理に取り入れ ることである。あるいは、絶えず現地の食材が四川風にアレンジされる 」
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
というオーストラリアの四川料理経営者の発言は面白い。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月19日
中国料理の各国のローカライゼーションとグローバリゼーションは今、中国料理研究で一番ホットなところであり、また中国本土の四川料理も変化している。
これらの関係性を見る視点は取り入れていきたいと思う
浜本篤史 園田茂人 現代中国における日本食伝播の歴史と力学一北京の日本料理店経営者を対象にしたインタビューから-
謝論文と関連して読んだので紹介。
北京における日本料理に関する論文だが、取り組んでいる人はかなり「真正性」にこだわっているのが意外であった。
もっと、現地に合わせて緩くやっていると思ったが、日本人も中国人も「ちゃんとした日本料理」をつくるというプライドをもってやっているのがわかる、論文だった。
#一日一論文 浜本篤史 園田茂人 現代中国における日本食伝播の歴史と力学一北京の日本料理店経営者を対象にしたインタビューから-https://t.co/sRkx5hlwNN
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
北京における日本料理(店)の現地化について、日本料理店の「老板」(経営者)を中心に,作り手と客との間,教える側と継承者との間に現れる文化現象をもとに考察したもの
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
2004年の北京の日本料理店は143店(大規模チェーン店を除く)ある。いずれも日本人または中国人の老板の経営の店が中心である。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
日本人の場合、「文化メッセンジャー」として、中国人の場合は「職人意識と料理の正統性へのこだわり」から、北京では日本で提供されているのとまったく同じ味と形式で提供され、そこから日本食が逸脱することは歓迎されていないとする
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
これは北京における日本料理の大衆化プロセスが未だ初期段階であることに起困しているとも考えられるが、料理の出し方,店の雰囲気などは、なし崩し的な変容をみせており, 「寿司天ぷら」など,メニュー変化の兆しも見られるとする。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
昨日の謝春游の四川料理の海外展に関する論文の、「(四川料理における食文化の融合とは)元々ある四川料理を地元の料理へ変容するのではなく、地元の料理要素を四川料理に取り入れ ることである」という発言と較べると、四川料理と日本食のそれぞれの「食文化の融合」に対する認識の違いが見えてくる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
国境を越える文化について、起源国と受入国との問に文化的支配一従属関係が生じる(ジョージ・リッツア『マクドナルド化する社会)/グローバリゼーション現象の一環として進行する「脱領域化」(トムリンソン『グローバリゼーション―文化帝国主義を超えて』)の議論と
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
ジャパナイゼーションに関する議論(石井健一編,2001,『東アジアの日本大衆文化』蒼蒼社)は先行研究として要確認
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月20日
松本 淳ほか 日本地理学会2018年秋季学術大会シンポジウム報告 「食の人類史からみたモンスーンアジアの風土を読む」
ちょうど、科博の和食展に行ったこともあり、講義で食のパッケージにも言及するので、この論文を読む。
佐藤洋一郎先生の『食の人類史』は購入したが未読状態。早く読まねば。
この論文も地理学会リツイートしてもらった成果、比較的注目を浴びた。
#一日一論文 松本 淳ほか 日本地理学会2018年秋季学術大会シンポジウム報告 「食の人類史からみたモンスーンアジアの風土を読む」https://t.co/bWHeYfDK5z
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月21日
日本地理学会の「モンスーンアジアの風土研究グループ」の発表報告。
現在、科博特別展の和食展の中で重要な要素となっている「食のパッケージ」という概念について提唱者の佐藤洋一郎が概説を行う。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月21日
「人間の生存には糖質とたんぱく質,脂質などの栄養素の摂取が必須である.世界の人類集団はそれらの栄養素を持つ食材を同所的に獲得し,加工調理してきた.これが食のパッケージ」としたうえで
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月21日
「(風土と食の相互補完的な関係性から)風土の枠組みを越えた食のパッケージを持続的に維持することは不可能である」とする。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月21日
このほか、「気候学からみたモンスーンアジアの風土」https://t.co/qKxXIDYaS8
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月21日
「モンスーンアジアの地形環境から食を検討する」https://t.co/jhLpUb8Djn
「モンスーンアジアにおける近年の稲作技術展開」https://t.co/bMw6QkwflY
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月21日
「辛い四川料理とモンスーンアジア」https://t.co/ZrzybADNBs
などの報告あり
佐藤洋一郎先生の『食の人類史』は目を通しておかねばhttps://t.co/VLIGgLmwiW
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月21日
堀越昌子 野間晴雄編(滋賀大学教育学部滋賀の食文化調査研究班) 滋賀の伝統的食文化図録
#一日一論文 堀越昌子 野間晴雄編(滋賀大学教育学部滋賀の食文化調査研究班) 滋賀の伝統的食文化図録https://t.co/sx3cZRlsPq
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月22日
1992年度の滋賀の食文化に関する調査研究報告書。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月22日
風土的背景/考古遺物に見る食物/食用作物/食用淡水魚/伝統食品/献立/調理技術/姉川流域3集落の夏期日常食献立/姉川流域の栄養調査/祭礼の食物/ナレズシ/淡水魚の流通と販売
を載せる。こういう報告書が電子化されるのはありがたい
食用作物はカブが中心。私のよく行くフィールド世継周辺だと「磯の赤カブラ」の記載あり。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月22日
「(マキノ町(現高島市)の蛭口カブラと同じカブラが)、入江、朝妻筑摩、世継といった米原町、近江町の湖岸で多く栽培され、 「磯の赤カブ J と呼ばれている由。
今度現地で聞いてみよう。
湖南のすしきり祭りは守山市幸津川(5/5)草津市下寺町(1/9)を載せる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月22日
こちらも一度見学に行きたい。
滋賀の食文化については、「滋賀の食事文化研究会」の活動も確認のことhttps://t.co/eSKFKUwiJh
童 江明,李 幼均,伊藤 寛 中国の醤
地理学の講義で、味噌について毎年話しているが、味噌が大きい分類では醤の一種だと話すと、学生に意外な顔をされる。
味噌も豆板醤ももろみも、大きくは醤の一種なのである。
その際に、豆板醤の説明もするので改めて中国における醤の製法を確認するために読む。
#一日一論文 中国の醤
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
童 江明,李 幼均,伊藤 寛 中国の醤(そ の1)原料の異なる醤の製造法https://t.co/AjXVXCsuD4
呉 周和,李 幼均,金 鳳燮,伊藤 寛中国の醤 (その 2) 地域別にみた主な醤の製法と品質特性 四川, 東北地方の醤https://t.co/VtzB3P9pnu
呉 周和, 呉 傅茂, 宋 鋼, 伊藤 寛 中国の醤(そ の3) 地域別にみた主な醤の製法 と品質特性 北京の周辺, 華東地方の醤https://t.co/1E2Qvw51s6
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
中国の醤(ジャン。醤油のもろみなど半流動状の粘稠などろどろした調味食品)、特に穀物を発酵して作った醤について解説した論文。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
中国では醤、動物性蛋白の醤(肉醤や魚醬)。穀物を発酵して作っ た醤(黄醤・豆板醤、日本の味噌も含まれる)。
ペ ースト状のソース(花生醤や芝麻醤。また果物のジャムやマヨネーズなども含む)に大別する。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
(1)では甜面醤、黄醤(北方では大醤と呼ぶ)、豆板醤の製法の概略を記す。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
甜面醤は麺糕と呼ばれる麺状の生地か、麺肥と呼ばれるパン状の小麦をもとに作る(だから甘い)。黄醤は大豆。豆板醤はソラ豆(と唐辛子)を原料にする醤。
(2)では四川の豆板醤と東北地方の大豆醤、豆板醤、甜面醤、北方調味醤を紹介する。日本では地名を冠した豆板醤はせいぜい郫県豆板醤くらいしか知られていないが、豆板醤にここまで種類があるの知らなかった。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
また東北では豆板醤にソラ豆でなく大豆をつかうとのこと。また北方調味醤は韓国のコチュジャンに似たものとのこと。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
(3)では北京黄醤(北京)、胡玉美豆瓣辣醤(安徽省安慶)、南康辣醤(江西省)、淳安辣椒醤・桐郷辣醤((浙江省)、普寧豆醤(広東省潮汕)などの製法を紹介する。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
最近、潮汕料理が気になっているので、普寧豆醤おいてるかは聞いてみたいと思う。
ところでこの論文に名前が出て来る金 鳳燮(ホウショウ、fèng xiè)氏は『中国の酒事典』書いた人だ。amazonみたら安かったのでポチる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月27日
中国の酒事典https://t.co/h3YUiiLOon
金 鳳燮氏は
中国の味噌様大豆発酵食品 (醤, 豆鼓, 豆腐乳) についてhttps://t.co/pq5zif5vkB
という論文もあるので、要確認
【地理学】【民俗学】
千葉徳爾 地理学と日本民俗学との接点
食文化ばかりというのもなんなので、民俗学関連のものも読む。
不思議とこれもビュー数があったが、千葉徳爾という名前で見る人が多かったのだろうか?
千葉の論文(特に地理学との関連)については一度きちんと整理をしなければならないと思っている。
千葉徳爾著作選集高いんだよねえ。あまり図書館でも置いてないし・・・
千葉徳爾著作選集 全3巻 - 株式会社 東京堂出版 限りなく広がる知識の世界 ―創業133年―
#一日一論文 千葉徳爾地理学と日本民俗学との接点https://t.co/Uq4DH1klaI
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月25日
1963年の地理学評論に書かれた、地理学と民俗学の交渉史と展望。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月25日
千葉徳爾は地理学と民俗学両方を進めた人ではあるが、現在は、大塚英志の著作などにより、民俗学者とみる向きの人の方が多いかもしれない。
柳田が「民俗学は,ある歴史をもった民族が,い ろいろと条件のちがう土地に住んでも,どれだけもとのくらしぶりをもちつづけるかを考えるのだが,地理学は,ある条件をそなえた土地では,いろいろな民族が,どれほど似たくらしかたをするかを研究するものではないのか」と語ったうえで
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月25日
「僕は,君がどこまでわれわれといっしょにやっていけるか,大きな興味をもってみているのだ。」と千葉に語ったのは、柳田は千葉を地理学者としてみていたことがわかる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月25日
特に本稿では戦前の地理学側から見た民俗学への交渉として、山口貞夫、吉村信吉、小川徹、山口弥 一 郎、山口麻太郎などを上げる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月25日
山口麻太郎の「民俗資料と村の性格」は院生の時に読んだ気もするが忘れてしまっている。関敬吾と論争してたはず(うろ覚え)
民俗学の側は、人文地理学に対して 「複雑多岐」「時代の所産」と捉えており、いっぽう地理学も「柳田さんのような文章を,参考文献としてあげることはどんなものだろうか」(吉村信吉)ととらえてていたという証言は面白い。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月25日
千葉の「民俗学における地域性の問題 」も確認してみよう。
【生活改善運動】
酒井貴広 戦後高知県における 「生活改善」 の展開と犬神変容に関する研究
本筋の研究に関連した論文も読む。
この著者の単著も買ったので読まねば。
#一日一論文 酒井貴広 戦後高知県における 「生活改善」 の展開と犬神変容に関する研究https://t.co/RFHR2qzQnB
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
高知県での生活改善普及事業と新生活運動の経緯を描くとともに、これらの運動が「民俗」にどのような影響を与えたか、高知新聞の記事から「生活改善」の語を抽出し、分析を行う。
筆者によれば高知県下における生活改善の流れは以下のように分析できる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
1940年代:衣食住の改善と迷信の打破を目指す活動が、他の日本各地と同じく大いに盛り上がった
1950年代:各種行事への締め付けは強くなり、特に祝宴に関しては一切の飲酒や行事の開催そのものを禁止する
1960年代:生活改善の目標が食に集約されつつも、市町村を越えた女性広範囲な連携が見られるようになる
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
1970年代:「生活改善センター」の爆発的な増加と「女性主導の食生活の改善」の進展
1980年代:市町村における特産品や郷土料理を価値付ける+子供の食育が中心。戦後以来の新生活運動は下火
1990年代:「郷土料理」の創作が本格化
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
2000年~現在:1980年代以降の流れを受けて、高知県の「生活改善」は、食の改善の形で継続する
本稿では旧大方町における迷信打破については、あまり分析がなされていないが
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
生活改善について婦人会と青年団の協働が失敗し、婦人会が中心となって進めていたこと
しかし青年団においては、昭和28年に犬神への差別を取り上げ、迷信打破のための部落総会を開いて大衆討議をさせるといった、憑きもの筋の問題に対する大変興味深いアプローチも見えることを記す。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
本論文では、生活改善運動と犬神への言及はあまり多くを割かれていないが、地方新聞を題材に、生活改善運動を10年区切りで分析したのは評価できる。
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
同様の分析を私の方でも一度全国紙などからやってみようと思う。
またp.127 「高知県においては、生活改善諸活動が、田中の摘した生活改善普及事業と新生活運動のように、明確に弁別されてはいない」という指摘は重要
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
なお、生活改善が迷信にどのように影響を与えたかは、興味深いので著者の博論など
— 酒徒吉風 (@syutoyoshikaze) 2023年12月26日
高知県における「犬神」観の変容に関する研究-戦後を中心としてhttps://t.co/Eq6jUneuZh
も確認したい。