酒徒行状記

民俗学と酒など

【2023年12月後半】今月の一日一論文

12月後半の一日一論文をまとめる。

この期間は、かなり食文化関連の論文を中心に取り上げた。

なかでも麻婆豆腐論文がプチバズったのはびっくりした。みんな麻婆豆腐好きねえ。

写真は赤坂の陳麻婆豆腐の麻婆豆腐賦。

 

陳麻婆豆腐の麻婆豆腐賦(全景)

陳麻婆豆腐賦(1)

陳麻婆豆腐賦(2)

陳麻婆豆腐賦(3)

【食文化】【中国料理】

福留 奈美、小磯 華織 日本における麻婆豆腐の伝来と受容-調味料・香辛料によるタイプ分類

なおコメントにある王馬熙純はこのような人物。

王馬熙純 - Wikipedia

王馬 熙純さん|料理家レシピ満載【みんなのきょうの料理】NHK「きょうの料理」で放送のおいしい料理レシピをおとどけ!

戦前、ハルピンから来日してピアノ演奏家となり、ハルビンに戻った後、戦後再び来日して、中華料理の指導に当たるという数奇な運命な方である。非常な名家の出なので、1950年来日したのは、たぶん中華人民共和国による地主階級・資本家階級への迫害を避けてとのことだと思うがどうだろう。

 

中林 広一 失われた麻婆豆腐を求めて

 日本における麻婆豆腐の伝来と受容論文が結構、表示回数も多かったので、二匹目のドジョウを狙って、麻婆豆腐がらみの論文をもう一本掲載する。

 #一日一論文は表示回数が100~200前後だけど、これは、7.6万ビュー、リツイート293、いいね565(1月11日現在)とプチバズ状態となった論文。

 一日一論文、あまりツイートする意味ないかなとも思っていたけど、この反響を見て、やる気が出た。

 なお後述するが、本論文は中国側の資料の確認が足りないところがあるので、読む際には注意が必要かと思っている。

 

ただこの論文、非常に面白いが、中国側の資料の博捜が少ないようにも感じている。

この点は 川味 @chuanweikoji 氏からもご指摘をいただいた。読む際には注意が必要と思っている

 

謝春游 食のグローバル化における四川料理の海外展開一日本の「四川飯店」とオーストラリアの「水井坊四川酒楼」の事例を中心にー

 三匹目のドジョウというわけではないけど、同じ系統で中華料理論文を掲載する。

これはあまり伸びず。日本の四川料理ローカライズと、オーストラリアの四川料理の比較というとても面白いテーマなのだけど。

 みんな、「麻婆豆腐」という料理には興味はあるけど、総体的な中国の食文化については興味を持つ人はそう多くないということか…

 「麻婆豆腐やエビチリといったなじみのある料理は売れるけど、それ以外の知名度の低い四川料理はなかなか売れない」という話を四川フェスで聞いたが、それと似た感じかもしれない。

 

浜本篤史 園田茂人 現代中国における日本食伝播の歴史と力学一北京の日本料理店経営者を対象にしたインタビューから-

 謝論文と関連して読んだので紹介。

 北京における日本料理に関する論文だが、取り組んでいる人はかなり「真正性」にこだわっているのが意外であった。

 もっと、現地に合わせて緩くやっていると思ったが、日本人も中国人も「ちゃんとした日本料理」をつくるというプライドをもってやっているのがわかる、論文だった。

 

 

松本 淳ほか 日本地理学会2018年秋季学術大会シンポジウム報告 「食の人類史からみたモンスーンアジアの風土を読む」

 ちょうど、科博の和食展に行ったこともあり、講義で食のパッケージにも言及するので、この論文を読む。

 佐藤洋一郎先生の『食の人類史』は購入したが未読状態。早く読まねば。

 この論文も地理学会リツイートしてもらった成果、比較的注目を浴びた。

 

 

堀越昌子 野間晴雄編(滋賀大学教育学部滋賀の食文化調査研究班) 滋賀の伝統的食文化図録

 

 

童 江明,李 幼均,伊藤 寛 中国の醤

 地理学の講義で、味噌について毎年話しているが、味噌が大きい分類では醤の一種だと話すと、学生に意外な顔をされる。

 味噌も豆板醤ももろみも、大きくは醤の一種なのである。

 その際に、豆板醤の説明もするので改めて中国における醤の製法を確認するために読む。

【地理学】【民俗学

千葉徳爾 地理学と日本民俗学との接点

 食文化ばかりというのもなんなので、民俗学関連のものも読む。

 不思議とこれもビュー数があったが、千葉徳爾という名前で見る人が多かったのだろうか?

 千葉の論文(特に地理学との関連)については一度きちんと整理をしなければならないと思っている。

 千葉徳爾著作選集高いんだよねえ。あまり図書館でも置いてないし・・・

 

千葉徳爾著作選集 全3巻 - 株式会社 東京堂出版 限りなく広がる知識の世界 ―創業133年―

 

【生活改善運動】

酒井貴広 戦後高知県における 「生活改善」 の展開と犬神変容に関する研究

本筋の研究に関連した論文も読む。

この著者の単著も買ったので読まねば。