酒徒行状記

民俗学と酒など

麹町「シディーク」

 以前、私の職場にバイトしていた男が上京してきた。彼はバイトを辞めた後、郷里の秋田に帰ってしばらく地元の高校で英語の講師をやってのだが、今度、大学受験をしに東京に戻ってくることにしたらしい。なんでも、英語教師になるのはやめて、弁護士を目指すべく、そのために法学部のある大学に行きなおそうと思ったのだそうだ。そして、今回はその情報集めと参考書を買いに上京してきたのであった。

 一度、大学を出ているのに、もう一度大学に行きなおすなんて、酔狂だなあと思うのだが、本人がやりたいというのだから仕方がない。
 折角なので、職場の友人一同で宴会を開く。場所は会社のそばにあるシディークというカレー屋だ。
 ここは昼は1000円くらいでカレーのランチがあり、なかなか旨いのだ。今回上京してきた男も好きで良く昼飯を食いに来ていた。

 男が酒を飲まないので、珍しく酒抜きで宴会を始めた。今回初めて、ノンアルコールビール(低アルコールビール)というのを飲んでみた。あのアルコール分が1パーセント以下なので酒税法上、酒に分類されないってやつですよ。
 銘柄はバクラーだった思うが、なんというか麦芽糖の味なのかへんな甘さがある気がする。匂いもイースト菌の匂いが強くて、なんだか素人が地ビールキットで作ったビールみたいな感じだ。1本呑んで、やっぱり我慢できずに生ビールを頼む。
 つまみはタンドリーチキン・ココナッツチキンカレー・ほうれん草のカレーなど。皆で頼んだのを分け合う。ここのココナッツチキンカレーは少し甘すぎるきらいもないが、辛いものがそんなに得意ではない私にはありがたい。

 ひとしきり皆で昔の職場の馬鹿話や、男に大学を再度やり直すのはもったいない、せめて法科大学院ではどうかなどと説教をする。
 腹がくちくなったところで散会。その日の夜行バスで故郷に帰る男と記念撮影をして、皆と二軒目、麹町「とんがらし」に呑み直しに行ったのであった。