酒徒行状記

民俗学と酒など

藤水名子『戦国餓狼伝』角川書店

 藤水名子を知ったのは、中学生から高校生になるくらいのときだった。
 中学3年生の頃は中国文学にかぶれていて−平凡社の『中国古典文学大系』を片っ端から読んでいた−その一環で、この『開封死踊演武』をはじめとする藤水名子の一連の中国を舞台にした時代小説にもはまっていた。思えばあの頃は、小説の登場人物がしていたように「花間一壷の酒、独り酌んで相親しむ無し」「言無く獨り西樓に上れば,月、鈎の如し」街中で口ずさんでいたりした。ああ、穴があったら入りたい。
 一番初めに読んだのは『開封死踊演武』。中国、北宋時代末期。暗殺結社白蓮教の元刺客にして京劇の花形女優、劉蘭姫をはじめとする開封遊撃隊の面々が、開封の町を鬧がせる悪党どもを討つというもの。要は中国版必殺仕事人である。
 今回読んだ『戦国餓狼伝』は舞台は日本の戦国時代だが、基本的な話の流れは開封と同じ。凄腕の必殺仕事人を稼業とする、女性ヒロインが、同じ仕事人仲間となんだかんだで恋仲(ヒロインはツンデレ・男は飄々としたイケメンと相場は決まっている)になり、人質になったり過去の経緯が明らかになったりで、なんだかんだで敵を斃すというもの。
 藤水名子の作品の登場人物はほとんどこのパターンが多く、7、8冊くらいを読んだ後はしばらく読まずにいたが、久しぶりに読むと、「おお、相変わらずの藤水名子節じゃ」と懐かしく感じられた。
最もハマっていたころは新刊がでるたびにチェックはしていたが、最近は未読の作品もだいぶ多くなっているようなので、いずれ、まとめて読んでみようかとも思っている。