酒徒行状記

民俗学と酒など

剣術を使う者ほど・・・

 3日間、鹿島神宮で古武道の合宿に行ってきた。
 なぜ、鹿島神宮で合宿かというと、私のやっている古武道の流派が鹿島神宮の祭神建御雷命(タケミカヅチのミコト)を祀る流派であるからであり、合宿の最後には神宮に奉納演武が行われるからである。
 正式な流派名は当然あるのだが、まだ私自身が正式な入門前の身であることもあり、ここでは流派名は控えさせていただく。 ちなみに正式な入門は鹿島神宮に兵法に関する起請
文を出し、それが受理されなければならない。起請文には「教えてもらったことは他言しない」とか「みだりに他流試合はしない」とか書いてあり、それに背けば「鹿島大神・八百万の神神罰が下る」というオソロしい代物である。でも「起請文なんで血判を捺した方がいいですか?」と先輩に聞くと、さすがにそこまではしなくていいそうである
 
 さて、この合宿の宿泊先と道場は毎年、鹿島神宮近くの、とある財団法人が経営する合宿所を毎年借りている。
 この合宿所、関東の剣道や古武道の人には結構知られたところで、ここの道場を使っての大会なども行われているようなのだが、経営する財団法人が国粋主義的な思想を持つ団体
らしく、敷地内にいろいろ面白いものがあったりする。
 
 まず、敷地内には国旗掲揚台があり、合宿の参加者は必ず国旗掲揚と降納に立会い国歌斉唱をしなければならない。
 そして、道場内に神棚があるのはまあ良いとして、神棚の上に飾ってある忠孝の額が面白い。

この忠孝の字、紙に墨で書かれた書ではなく、布に綿を入れてクッション状にして作られている(なんという呼び方をするのか知らない・・・キルトじゃないし、なんだろう。)のであまり上手く見えないが、なんと日本海海戦東郷平八郎の書を元にしたものであるという。
 さらには、戦前・戦後の右翼の大立者、頭山満肖像画が道場内にあったりする。

 まさか鹿島まで来てでこの人の肖像画を見るとは思わなかった。(ちなみに、私の流派は外国人も結構多く、英語でこの人物は何かと聞かれ、英語で右翼なんて単語は当然知らずひどく困った。「Nationalist fixer」と答えておいたが良いのだろうか・・・)
 神社などには子どもの頃やあるいは、大きくなってから民俗学の研究でよく行っていたが、民間の団体のこういう建物を見るのは人生で全くなく、初めて行った時はここは右翼の建物かしらんと少し恐ろしく、でも興味深々で敷地内を歩いたものであった。

 なお、敷地内にはある剣道家の辞世の句を刻んだ石碑がある
 曰く、
 
 「剣術を使うものほど馬鹿はなし 頭叩かれ礼を言うなり」
 「馬鹿が居りゃこそ御国が保つ 国を滅ぼす利口者」

 とのことである。一首目はウィットが利いていて面白いのだが、二首目はちょっと自信過剰というか尊大すぎるきらいがあるように思われるのだが、いかがだろうか。