同僚でもあり古武道の先達でもあるO氏と飯を食う。
場所は麹町香港園である。この中華屋、以前は小さな定食屋しかなかったが、近年、宴会もできる新館をこしらえた。
名物というか私のお気に入りは、豆腐干絲(乾豆腐という豆腐の加工品を、麺状に千切りしたもの)を胡瓜と和えた『涼胖豆腐』である。
豆腐とは思えないもちもちっとした食感とかすかな塩気がたまらなく、簡単な和え物なので出されるのも早いので、お通しがわりにうってつけである。
食べたのはそのほかに、麻婆豆腐・海鮮グオパー(おこげ)・鳥のカシューナッツである。
O氏とは武道と手の怪我の話。
私が習っているのは日本刀による剣術が主体な流派なのだが今回、自分が事故で手を切って見て、いかに「斬る・斬られる」というのが恐ろしいものであると思った話をした。
僅かに手のひらを切っただけで、行動不能になり、病院に一月も入院する羽目になり、後遺症に苦しむのだ。
習っているのとは別の流派−見切りを得意とした剣豪が開いた流派の技−の技で、左手を誘いにして、相手が斬ってきたところを、見切って斬り返す技があるのだが、あれなんかも左手一本捨てようとする覚悟と見切りに絶対の自信がないと絶対にできない技だと改めて思った。
O氏からは「その覚悟をもって練習を続けてください。」とお言葉をいただく。
覚悟といえば、店の壁を見ると、
君不見黄河之水天上来
奔流到海不復回
君不見高堂明鏡悲白髪
朝如青絲暮成雪
人生得意須尽歓
莫使金樽空対月
天生我材必有用
千金散尽還復来
煮羊宰牛且為楽
会須一飲三百杯
という李白の「将進酒」の一節が書いてあった。
酒を呑むのもこの詩のような心意気と覚悟で呑まねばなと酔った頭でぼーっと思った晩であった。